コロナ「協力金バブル」翻弄される飲食店の実情 飲食店と消費者の間に壁ができている
「支給の遅延も飲食業界を苦しめている大きな要因」と東龍さんが説明するように、協力金の支給にも瑕疵がある。
先の週刊女性PRIMEが実施したアンケートでも、「協力金が支払われているのは何月分まで?」という問いに対し、「5月まで」と答える人もいれば、「8月まで」というようにバラバラだ。しかも、支払われた協力金の金額(総計)に関しては、100万円から1000万円越えと大きな差異がある。公平さに欠ける施策と言わざるを得ないだろう。前出のA氏のように、協力金を元手に新たな事業を画策する経営者までいるとなれば、現状は“給付金狂騒曲”といえる。
お酒や飲食はネガティブなものに
協力金とは一体何なのか……。何に協力しているんだとツッコミたくなる。また、ある工務店は「店舗解体が増えている」と教える。
「解体は木材、鉄骨、コンクリート、内装物のあるなしなどで費用が変わります。今は産業廃棄物処理料が高く、一坪3~8万円くらいが相場になっている。10坪のお店を解体するにしても100万円ほどかかることが珍しくありません。そのため、協力金を解体費用にあてる人もいるみたいですね」
街中を歩いていると、「え? ここ閉まるの!? 年季の入ったよいお店だったのに……」などと驚くことが少なくない。モチベーションの低下や、降って湧いたような協力金という名の退職金。こういった事情に鑑みれば、お店を閉めてしまう人がいても不思議ではないだろう。
飲食店は、「我慢してください」一辺倒の政府や自治体を信用しなくなり、ユーザーは飲食店に対して信用を失いつつある。『感染拡大防止協力金』がもたらした“分断”を政府は予測できなかったのだろうか? 前出の東龍さんは語る。
「お酒に対するネガティブなイメージがついてしまったようにも思います。SNSなどは顕著ですが、お酒の写真をあげることや、飲食を楽しんでいる写真をあげることをためらう人が増えている。アップしようものなら何を言われるかわかりません(苦笑)。外食やお酒の印象が悪くなると、飲食業界全体にとって痛手となります。単にお金を配るだけではなく、飲食に従事する方、飲食を楽しむ方の心情をきちんと考えた施策が必要だと思います」
本来、外食は楽しいものだったはず。どうしてこうなった……。
(取材・文:我妻アズ子)
テレビ東京「TVチャンピオン」で2002年と2007年に優勝。 ブッフェ、フレンチ、鉄板焼、ホテルグルメ、スイーツをこよなく愛する。 炎上事件から美食やトレンド、食のあり方から飲食店の課題まで、独自の切り口で分かりやすい記事を執筆。
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