2大旅客機、ボーイングとエアバスの意外な違い パイロット視点で見たそれぞれの設計思想
エンジン火災時、ボーイングとエアバスで何が違うか
もし、ジェット旅客機のエンジンで火災が発生したら、どうなるでしょうか。クルーは全員で火災が発生したエンジンを確認し、
・燃料を遮断してエンジンを停止させる
・消火器の作動準備をする
といった操作を実施します。これらの操作によりエンジン火災の原因となる、燃料、油圧装置作動液、高温圧縮空気、発電機などが遮断されます。それでもエンジン火災のメッセージが消灯しなければ消火器を作動させます。なお、これらの操作は緊急を要する場合に実施する「メモリー・アイテム」と呼ばれている暗記による操作となります。
ボーイングの場合、エンジン火災時は、スラストレバー(エンジンの出力を変えるためのもの)を最小出力位置にする前にオートスロットル(自動推力装置)をオフにします。出力状況に合わせてスラストレバーも自動的に動くようになっているため、オートスロットルをオフにしないと最小出力位置にしても元の出力位置まで戻ってしまうからです。
ボーイングが、オートスロットル作動中でもスラストレバーを動くようにしている理由は、「パイロットが直感的に飛行状況を把握できる」からです。例えば、風の急変により減速してしまった場合にはスラストレバーが自動的に前に進むので、パイロットは直感的に「元の速度に戻るだろう」と感じ取れるからです。
なお、エアバスではA310までスロットルレバー、オートスロットルと呼んでいました。しかし、本格的なデジタル機となったA320以降になるとスラストレバー、オートスラストに変更しています。また、スラストレバーは自動的に動く設計ではないため、火災発生などでエンジンを緊急停止するためにオートスラストをオフにする必要はありません。
余談ですが、アナログ制御していた時代ではエンジンの振動はケーブルを介してスラストレバーまで伝わってきました。
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