結局、期待したAさんからはOKをもらえず、Bさんはほかに発注するチャンスも逃します。これをきっかけに、両者の関係は悪くなってしまいました。
Aさんがその場を取り繕うために半ば社交辞令として伝えた一言が、大きな溝を生んでしまったのです。
確かにギリギリまで待ったBさんにも責任がありますが、その気がないのならAさんは、はっきりと断ったほうがよかったのです。それをしなかったために、相手に期待を持たせることになってしまいました。
このトラブルの原因は、断ることで相手に不快な思いをさせたり、怒らせてしまうかもしれないという思い込みです。
しかし、よく考えてみてください。曖昧にすることでその場はうまく収まったかもしれませんが、結果的には相手に損をさせ、関係性まで悪くしてしまいました。つまり、関係性を考えて、NOと言わなかったのは、「相手のため」ではなく「自分のため」だったのです。
このようなケースを生まないためにも、NOははっきりと、シンプルに伝えることが基本です。いきなりNOと言うのは失礼になるかもしれませんから、最初に日頃の感謝を述べてからNOの意思表示をするといいでしょう。そのときには誤解を生まないように、表情も言葉も曖昧にしないことが大切です。相手の目を見て、しっかりと言いましょう。
また、断るだけでなく、代案がある場合は、それを伝えると完全な拒否にならずに済みます。
例えば、午後の誘いを断る際に、「午前なら行けます」。あるいは日時の都合が悪い場合なら「○日なら空いていますが、いかがでしょうか」という具合です。
ただ、どうしても行きたくない用事の場合は、お茶を濁してはダメです。相手に期待を持たせないように、代案などは出さずに「夜は家に早く帰らなければいけない用事があるので、行けません」など、相手にわかるようにはっきりと断りましょう。
頼まれた仕事を角を立てずに断るには
断りにくい例としてよくあるのが、「仕事のサポートを頼まれた」というケースです。相手も困っていて必死に頼んでくることもあるでしょう。
この場合も、中途半端な同情は逆に悪い結果を招きます。頼まれた仕事が専門外であったり、自分の仕事で手いっぱいだったり疲れているときなどは、受けないほうがお互いのためです。
その場合は、
「最近、仕事が忙しくて疲労がたまっている。お手伝いをしてあげたいけど今は無理」
「今日は大事な用事が入っている。申し訳ないけど時間を取れない」
などの理由を、はっきりと相手に言うことです。
どうしても断りにくいケースならば、条件提示をしてみるのもいい方法です。「完璧にはできないけれど、それでも問題ないか」を問いかけてみるのです。
例えば、次のような言い方です。
「1人では無理なので誰か手伝ってくれる人をお願いできますか」
「働いているので平日はできません。土・日だけでよければ考えてみます」
このような言い方は相手に歩み寄る姿勢を見せることになりますので、相手も受け入れやすくなります。ビジネスなどでの商談には、日常的に使われる手法です。
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