このリンクエクスチェンジは、その後、マイクロソフトに2億6500万ドルで売却を果たす。つまり、シェイは大成功を収めるのだが、彼はその頃からハッピネスへの思索を始めることになったのである。
モチベーションより、インスピレーションを
「金儲けを超えた、もっと大きなビジョンと価値のために仕事をすること」。それがシェイのたどり着いた回答だった。金儲けや自分を超えた、さらに向こうにあるもの。それは、人々を幸せにし、世の中を変えることだ。その過程で自分も学習し、成長する。
ザッポスには、「10の価値」がある。「ワォ!と顧客が驚くようなサービスを提供すること」「変化を起こすこと」「楽しさと、ちょっとした奇妙さをクリエートすること」「コミュニケーションを通じて、オープンで正直な関係性を築くこと」――といったようなことだ。
そうして、ザッポスの企業文化さえしっかりしたものにすれば、広告などにおカネをかけなくても、ブランドや売り上げは後からついてくると考えた。社員をハッピーにし、ハッピーな社員が顧客にサービスを尽くすことで顧客もハッピーになるという、よい循環を起こすのだ。
そのために、新たに雇用する社員はこのコアの価値に合うかどうか、合わせる気持ちがあるかどうかで厳しく選抜し、雇った後も合わないとわかればすぐに解雇する。解雇するのに報酬を与えるというのも、有名な話だ。報酬は、在籍した年数に合わせて2000〜5000ドルだ。
昇給も通常の18カ月ではなく、6カ月ごとに行う。社員が自分の進歩を感じられるようにするためである。シェイは、社員のハッピネスのためには、自分が仕事をコントロールしているという実感、進歩しているという実感、周りにつながっているという感覚を社員が持ち、ビジョンや意味が感じられることが重要だと考えており、短期間ごとに昇給評価を行うというのも、そのひとつの現れなのである。またモチベーションではなく、インスピレーションこそが社員にとって必要であると説く。
顧客サービスも断トツだ。たとえば、ザッポスで商品を買ってそれが気に入らないとなれば、返品は簡単にできる。しかも、返品は1年以内まで可能で無料。もちろん着用していないという条件だが、返品が簡単なアメリカでも、ザッポスはずいぶん寛容と言える。
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