日本文明圏の覚醒 古田博司著
中華文明圏は日本文明圏の源流であり上位にあって、後者は前者に包摂され続けているという錯覚がまかり通っている。
本書はそうした俗説を真っ向から批判し、日本文明の本質に迫ろうとするのだが、あまたの事例の中で、『源氏物語』に象徴的な「国風を担った女々しい女文字の文化」、あるいは狂言における「もどき」や「江戸時代の茶化し文化」、といった日本固有の文化の解明と重視はとりわけユニークで面白い。
アカデミズムに代表されるように正統、普遍、中枢が崩壊し、今や無数の「端末」を通じて情報が得られ判断される時代になったとして、かつての権威が次々に俎上に載せられ解体される。
シナ、朝鮮半島との比較文明論も多彩かつ多面的で、日本を相対視する視点から教えられることは多い。物事を因果律で判断したがる日本的呪縛の構造からはもう抜け出る時だ、東アジア共同体は文明論からすると所詮ありえない、などの指摘も貴重である。(純)
筑摩書房 2625円
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