ホリケンの「漢字練習?」ジョークがまずい理由 日本のお笑いが抱えている根本的な問題

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世界の多くの良心的な企業と同様、テレビ局の多くも偏見や差別に対して「ゼロ・トレランスポリシー」を採用している。一部も日本企業でも取り入れるところが出てきている。

モリス氏自身もその後の展開を受けて、今では自分の発言は後悔しているに違いない。ジョークを言った時は外国人をちょっとからかう無害なジョークに過ぎないと考えていたのだろう。その時同氏は番組を見ているのは彼と同じ白人男性で、このジョークに傷つく人はいないと感じたのかもしれない。

3年前、これも日本テレビの『ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!』で、ダウンタウンの浜田雅功氏は自分の肌を黒く塗り、『ビバリーヒルズ・コップ』のエディ・マーフィーの格好をすることが面白いと思った。世界中のメディアは報道を通じて、これが少しも面白くないことを伝えたが、それについて、浜田氏からも日本テレビからも謝罪はない。

2年前には、お笑いコンビのAマッソが、大坂なおみについて「日焼けのしすぎ」「漂白剤が必要」とジョークのネタにしたことについて謝罪している。今年初めにはオリンピックの開会式と閉会式の総合統括を務める佐々木宏氏が、タレントの渡辺直美氏が豚の格好をして、彼女を「オリンピッグ」と呼ぶ提案を出したことにより、謝罪のあと、辞任した。

つい最近は、父がコンゴ人である、日本ハムファイターズの万波中正選手が同じチームの選手から「日サロ(日焼けサロン)行きすぎだろ、お前」とジョークを言われる動画が出回った。これに対しては球団は公式サイトに謝罪文を掲載している。

日本のお笑いも変化のプロセスにある

これらのジョークはすべて見た目をからかう類いのものだが、こうしたジョークに日本社会は慣れっこになってしまっており、さらなる時代の変化が来るまではこの手のジョークは続くだろうし、視聴者からある意味待望もされている。

だが、「ミックスルーツ・ジャパン」代表のエドワード・須本氏は、日本でも時代は変わってきており、日本人のお笑いの基底もそれに合わせて変わっていくだろうと指摘する。

「コメディーは時代を映し出し、時に時代を新しくする作用がある」須本氏は言う。好例として「夫婦漫才は、もう肉体的な暴力や卑下したような、本来必要のないオチに頼ることがなくなっている。女性芸人の中には見た目に対する笑いに反対を表明する人も増えていて、テレビ番組で男性の相方に激怒しても、カットされずに放送されることもある」。

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