ホリケンの「漢字練習?」ジョークがまずい理由 日本のお笑いが抱えている根本的な問題

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なぜ、このような意見の分かれる問題になりかねない変化がおこるのだろうか。須本氏は次のように断言する。「メディアの中で、立入禁止区域がどう決められるのかは、『キャンセルカルチャー』や『ポリティカルコレクトネス』といった圧力で非難されてはいけない。見当違いの笑いの標的になった人が、はっきりと意見を述べることが重要なのは明白だ」。

馬瓜選手がこの記事についてコメントすることはないだろう。仮にあったとしても、以前に受けたインタビューからすると、おそらくこの出来事にはっきり意見を言わないだろう。そして、それを期待されるべきでもない。彼女は活動家じゃなく、アスリートなのだから。日本に名誉と栄光をもたらした、素晴らしいアスリートである。

見た目ジョークを「受け入れない」

となると、今度は日本側が馬瓜選手にできることをする番だ。はっきりしているのは、同氏は生涯にわたり日本国民であり、長きにわたって日本の印象と名声をあげてきた、ということだ。肌の色で今後いっさい、よそもの扱いや疎外感に耐える必要はない。

そして、日本人は下らないジョークのために馬瓜選手の見た目をネタにして、同氏の喜びを損なうような芸人やプロデューサーを好きなようにさせたり、手を貸したりすることに異を唱えなければならない。このまま放置していたら「害」になる。

須本氏は日本のコメディーについて「『無意識』で『悪気のない』偏見が頻繁に続くのは、自己満足と、オチを言うタイミングが重要なため、オチまでのニュアンスを注意深く分析したり、研究する能力のなさにある」と指摘する。

「その場の状況にできる限り影響を与えないようにする。これは、笑いが起きたし個人的には嫌ではないからといって、その場の『空気』に合わせるために日本人がやりがちなことだが、これは長期的な影響を無視してるす。おそらくだからこそ、日本のお笑い芸人たちは人種や肌の色にまつわるジョークをいまだに一定の割合で口にし、差別的な発言をした人に大きな反響が寄せられることもほとんどないのだろう。他人の違いについて笑うのではなく一緒になって笑いあえるように、笑いの価値観をアップデートする必要がある」

そう、これは笑い事ではないのだ。

バイエ・マクニール 作家

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Baye McNeil

ブルックリン出身の作家・コラムニスト・講演者。2004年に来日し、「The Japan Times」 などで執筆しながら、異文化の交差点で生きる経験や、人種・アイデンティティ・多様性について鋭い視点で発信している。代表作 『Hi! My Name is Loco and I am a Racist』 に続き、最新作『Words by Baye, Art by Miki』 では、日本人の妻と築いた人生をユーモアと洞察に満ちた筆致で綴る。日本社会の枠にとらわれない視点が話題を呼び、講演やワークショップも多数開催。ジャズ、映画、ラーメンをこよなく愛する。

ウェブサイト:Baye McNeil/life in Japan

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