知るほどハマる!「美術解剖学」の味わい深い世界 「ジョジョ立ち」やミケランジェロとも繋がる

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美術解剖学で用いるトポグラフィー図と解剖図。解剖図で筋肉の境界がわからない初心者はカラフルなトポグラフィー図で判別できる(画像:『名画・名彫刻の美術解剖学』より)
昨今、イラストやCGを勉強している人たちの間で「美術解剖学」が注目されています。企業に勤めながら趣味として勉強している方もいるようで、「推し(好み)のキャラクターが描けるようになりたい」という目的などで、熱心に勉強しています。
美術解剖学の知識が身につくと、人体を描くのがうまくなるだけでなく名画や名彫刻を鑑賞するときにも役立つといいます。『名画・名彫刻の美術解剖学』の著者である加藤公太氏(順天堂大学医学部助教)に美術解剖学を学ぶメリットを伺いました。

人体の描写には骨格や筋の正確な知識が必須

美術解剖学は、視覚芸術のために応用された解剖学教育です。主に「骨格」や「筋」といった人体の外形に影響する運動器について学びます。「美術に解剖学を導入する」というアイデアは、15世紀ルネサンスのイタリアで生まれました。レオナルド・ダ・ヴィンチの「解剖手稿」がとくに有名です。

よく「美術解剖学の知識は、いつ使えるのか」と質問されます。美術解剖学の目的のひとつは「知識によって観察眼を養う」ことなので、制作時、自分の知識量に応じて自動的に能力が発動します。ゲームでいう「バフ(有利な状態になること)」がつねにかかったような状態です。

骨格や筋などの内部構造を学ぶと、「体表にあらわれる起伏を判別する観察眼」が養われます。自分の手を眺めたり、鏡で顔を見たりすると、さまざまな起伏に気がつきますが、内部構造を一度知ると、まるで皮膚の下が透けて見えるかのように、それぞれの起伏の意味がわかるようになります。その結果、画力といった作品の表現能力が向上します。

美術解剖学はもともと、絵画や彫刻のための基礎教養として美術学校に導入されましたが、現代ではマンガやイラスト、アニメ、ゲームといった人体を表現する機会が多いジャンルのクリエイターに需要があります。マンガなどのキャラクターは「デフォルメ」されていることがほとんどですが、デフォルメは対象を意識的に変形させることなので、もとの形をよく知らないと、形を取捨選択したり、変形を上手にコントロールしたりできません。

もし、観察するだけで人体の起伏を十分に再現したり、デフォルメできたりしたのであれば、レオナルド・ダ・ヴィンチもミケランジェロも人体解剖をしなかったでしょう。

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