知るほどハマる!「美術解剖学」の味わい深い世界 「ジョジョ立ち」やミケランジェロとも繋がる

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『ダヴィデ』(ミケランジェロ・ブオナローティ)のトポグラフィー図(画像:『名画・名彫刻の美術解剖学』より)

ポーズのついた解剖図を数多く模写していると、同じようにポーズのついた美術作品の内部構造も判別できるようになります。ミケランジェロや古代ギリシャ彫刻といった過去の名作も、今以上に深く鑑賞できるようになります。

名作に表現された筋や骨の起伏は、いわば作品の見せ場です。手の込んだ起伏を発見できるようになると、作者が作品のどこに注力していたのか理解できるようになります。

作品を制作するだけでなく、美術館で鑑賞するときにも作品をより深く楽しめるようになる、これも美術解剖学を学ぶ効用の1つです。そして、作品鑑賞で得た発見や創作意欲は、自分の作品にフィードバックされていきます。

自分の内面やコンディションの重要さに気がつく

解剖学はよく「怖い」「気持ち悪い」といったホラー要素と結びつけられます。美術解剖学を学ぶことに尻込みをしている人の中には、そうしたホラー要素がイメージの根底にある方もいるようです。

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しかし、人体内部の精妙な構造を学んでいくうちに「自分の中にも存在している当たり前の仕組みなのだ」と考え方が変わっていきます。自分の体に目が行くようになると、体が健康でなければ思いどおりに手が動かなかったり、制作意欲が湧かず、作品を楽しめなかったりすることにも気がつくでしょう。

人体構造の知識は、表現技術の向上だけでなく、自分の内面やコンディションのチェックにもつながっているのです。

加藤 公太 美術解剖学の教員

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かとう こうた / Kouta Katou

1981年東京都生まれ。美術解剖学者。2008年、東京藝術大学美術学部デザイン科卒業。2014年、東京藝術大学大学院美術解剖学研究室修了。博士(美術、医学)。順天堂大学解剖学・生体構造科学講座助教、東京藝術大学美術解剖学研究室非常勤講師、京都芸術大学通信教育部イラストレーションコース非常勤講師、大阪芸術大学非常勤講師。「伊豆の美術解剖学者(@kato_anatomy)」としてTwitter(フォロワー14.3万人)や各地の講習会で美術解剖学を広く紹介している。著書に『スケッチで学ぶ美術解剖学』(玄光社)、『美術解剖学とは何か』(トランスビュー)などがある。

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