知るほどハマる!「美術解剖学」の味わい深い世界 「ジョジョ立ち」やミケランジェロとも繋がる
美術史に残る名作というのは、厳しい鑑賞者の審美眼に耐え、淘汰されずに残った作品たちです。名作には解剖学的に不自然でない表現のほかに、ポーズやディテールなど、現代でも通用する「見栄えする要素」も含まれています。もし作家本人が生きていて、SNSに作品写真をアップしたら、多くの「いいね」がつくことでしょう。こうした見栄えする要素は、美術作品でしか得られないものもあります。
例えば「ポージング」です。実際の人の頭部は「真横」を向けません。限界まで横を向いたときには、顎の先が肩の先端あたりを向きます。ところが、美術作品では、しばしば真横を向いています。これは、正面から見た胴体と横顔を同時に構成できたり、実際よりも躍動感があるように表現できたりする視覚的な効果を狙ったものと考えられます。
なぜ現代のクリエイターが美術解剖学を学ぶのか?
マンガ、アニメ、ゲームといった新しい美術領域であっても、過去の名作を知っておくことは表現のヒントになります。なぜなら過去のアーティストたちも、過去に作られていた名作を知ったうえで、最先端の表現に挑戦していたからです。美術作品は「ノールールで、自由に表現すること」と思われがちですが、実際には温故知新の世界です。何にも縛られず自由に制作すると、おそらく鑑賞者を得にくくなります。
ベストセラー『ジョジョの奇妙な冒険』の荒木飛呂彦先生は、作中でミケランジェロを引用しています。ミケランジェロは「ジョジョ立ち」のように、実際よりも強く体をひねった姿勢の表現を得意としています。
では、ミケランジェロはどこからこのポーズの着想を得ていたかといえば、一部は古代ギリシャやローマの人体彫刻です。特に『ラオコーン』が発掘されたとの一報を受けたとき、ミケランジェロは制作現場から100kmも離れた発掘現場まで駆けつけたと言われています。
制作現場に戻ったミケランジェロは、よほど感銘を受けたのか、当時、寝泊まりしていた部屋の壁に『ラオコーン』のデッサンを残しています。
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