アフガン撤退の米国、東南アジア外交のちぐはぐ インドネシアを回避、その真の狙いは何なのか

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2001年の同時多発テロ後、アフガン、イラク戦争に乗り出したアメリカの関心は中東に集中し、アジアといえば核開発を進める北朝鮮で手いっぱいとなった。

オバマ政権はリバランスをうたい、アジア回帰を掲げたものの、南シナ海の岩礁7つを埋め立てて要塞化する中国の動きを止められず、掛け声倒れだった。

跡を襲ったトランプ前大統領はASEAN主催の東アジアサミットに4回連続欠席するなど、東南アジア軽視は極まった。バイデン政権は軌道修正するかとみられたが、これまでのところワクチン供与のスピードを上げる以外、明確な政策や方針は見えてこない。

東南アジアで着々と布石打つ中国

他方、中国はアメリカが中東で戦争をしている間に東南アジアで着々と布石を打ってきた。核心的利益として南シナ海問題では一歩も引かない構えだが、ASEANとの間で海域での活動の法的根拠を定める行動規範(COC)の策定作業を形だけでも進めている。

何より投資と貿易、援助を通じて経済的にはこの地域で日米をはるかにしのぐ影響力を確立した。

日米側の巻き返しに有効とされた環太平洋経済連携協定(TPP)はトランプ政権が一方的に離脱した。その後、中国はASEANや日韓など15カ国が参加する世界最大の自由貿易協定(FTA)、地域的包括的経済連携(RCEP)の締結を積極的に後押しし、今年中の発効にこぎつける見通しだ。

ASEAN加盟国は「アメリカか中国か」という二者択一を迫られたり、踏み絵を踏まされたりすることを嫌う。一方で中国がこの地域で圧倒的な力を持つことにも強い警戒感がある。バランサーとしてのアメリカの存在に期待もしている。

だが、アメリカの関心はもっぱらクアッドにあるのではないかという猜疑心がASEAN各国に芽生えている。

軍事的にも経済的にも膨張する中国を前に、東南アジアにおけるアメリカのふるまいや関与は日本の安全保障や外交全般に大きな影響を与える。まずはこの秋に催される恒例の東アジアサミットにバイデン氏が登場するのか。どのようなプレゼンスを示して中国に対抗するメッセージを発するのか。日本にとっても関心事である。

柴田 直治 ジャーナリスト、アジア政経社会フォーラム(APES)共同代表

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しばた・なおじ

ジャーナリスト。元朝日新聞記者(論説副主幹、アジア総局長、マニラ支局長、大阪・東京社会部デスクなどを歴任)、近畿大学教授などを経る。著書に「ルポ フィリピンの民主主義―ピープルパワー革命からの40年」、「バンコク燃ゆ タックシンと『タイ式』民主主義」。

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