災害が多発する地球と「人新世」が未来に残す痕跡 コロナ禍が問いかける現代の物質文明のあり方
なぜこのようなことが毎年起こるようになったのだろう。
気象庁では2018年から、停滞する前線や広域の豪雨を温暖化現象と結びつける見解を公式に発表している。すでに地球の気候は、大きく変容してしまっているということだ。
このような気象災害を、地球レベルの気候変動から検討するのは、すでに久しいし、世界の科学者たちはこれに真剣に取り組んできた。
いわゆる懐疑派と呼ばれる奇妙な一群の人々による、メディアやプロの宣伝業のレベルでの撹乱は、かなりの(逆)効果があったのだが、すでに菅政権でさえ、2020年10月には「2050年カーボンニュートラル宣言」を出しており、温室効果ガスの排出を実質ゼロにする脱炭素社会の実現という掛け声をかけ始めている。
ガソリン車を2030年代半ばには禁止するという「グリーン成長戦略」は、ビジネス界や科学者、テクノロジーに関わる多くの人々にインパクトをもたらしている。
では、このような時代をどのように考えたらいいのだろう。この時代は、すでに地質学的にも、新しい時代を迎えている、という提唱がされている。それが、「人新世」という概念の提唱である。このような時代に、いったい私たちはどうしたらいいのだろう。
地質学的な「悠久の時代」を考える
前置きが長くなってしまったが、本書は1つの答えを与えてくれる、イギリス・エディンバラ大学の英文学の教授が書いた環境の本である。正確にいうなら、この著者は英文学と環境学の教授らしい。
英文学と環境学? そんな2つの異なる分野で、教授ポストを持つとはどういうことだろう。実はすでにこのことが、本書の特徴となっている。
エディンバラ大学で英文学の教授を務めている著者デイビッド・ファリアーが、自然と場所について書くコースを教えており、学生たちを伴って地質学的な「悠久の時代(ディープタイム)」を考えるための現地調査に出かけることから、本書は始められる。
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