2学期「子どもの感染拡大防止」に欠かせない視点 デルタ株で重症化の例も、ワクチン接種は有効か

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小児の感染動態についても、研究が進んでいる。8月16日、カナダの公衆衛生当局がアメリカの『医師会誌小児科版』に発表した研究によると、小児の感染を確認した6280世帯のうち、1717世帯(27.3%)で2次感染が確認された。周囲にうつしやすいのは0~3歳児で、14~17歳と比較した場合の感染拡大リスクは1.43倍だった。なぜ、この年代の感染者が、周囲にうつしやすいのかは現時点ではわからない。

こうなると、9月に新学期が始まれば、学校で感染が拡大するのは避けられそうにない。

アメリカ・テネシー州ナッシュビルでは、学校が再開された最初の2週間で、602人の生徒と119人の職員の感染が判明しているし、法政大学野球部でも33人の集団感染が確認されている。

臨時休校し、オンラインで授業を行うべきだろうか。私は賛同できない。教育へ与える影響が大きいからだ。感染拡大を防ぐため、リモートで授業を行えば、iPadやパソコンなどを購入できる裕福な家庭の子どもと、このような機器を準備できない経済的に困窮した家庭の子どもでは、大きな格差か生じてしまう。教育格差は、賃金格差や健康格差を生じ、社会の格差を固定してしまう。子どもたちには、対面による教育環境を整備しなければならない。

検査・隔離とワクチン接種が必要

どうすればいいのか。基本に立ち返るしかない。検査・隔離とワクチンだ。

すぐにできるのは検査の拡充だ。政府は、来月から最大で80万回分の抗原検査キットを教育現場に配布する方針を表明しているが、これでは不十分だ。微量のウイルスでも増幅できるPCR検査と異なり、抗原検査が陽性になるには一定量のウイルスが存在しなければならない。

今年1月、アメリカ疾病対策センター(CDC)は、発熱などの症状がある人の場合、抗原検査はPCR検査陽性者の80%で陽性となるが、無症状感染者の場合には41%まで低下していたと報告しているし、6月には、アメリカ・プロフットボールリーグ(NFL)に所属する医師たちが、昨年8月~11月までに実施した約63万回の検査結果をまとめ、抗原検査は感染早期を中心とした42%の陽性者を見落としていたとアメリカの『内科学会誌』に発表している。

抗原検査は、その場で検査結果がわかるため、クリニックなどでの迅速診断に有用だ。ただ、学校でのスクリーニングなど、時間的な猶予が許される状況で、PCR検査を避け、抗原検査を利用する合理的な理由はない。

では、なぜ、日本政府は抗原検査にこだわるのだろうか。私は厚労省の都合を優先したためだと考えている。コロナ流行以降、厚労省はPCR検査を抑制し、抗原検査の使用を推奨し続けてきた。保健所の負担を減らしたい厚労省にとって、保健所の手を煩わせず、検体採取現場で検査できる抗原検査は好都合だ。

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