2学期「子どもの感染拡大防止」に欠かせない視点 デルタ株で重症化の例も、ワクチン接種は有効か

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臨床医学では、医薬品の安全性・有効性は臨床試験で検証する。ワクチンも例外ではない。ファイザー製のコロナワクチンの場合、12~15歳の小児を対象とした臨床試験の結果が、5月27日にアメリカの『ニューイングランド医学誌(NEJM)』で報告されている。『NEJM』は世界最高峰の医学誌だ。

この臨床試験では、小児2260人がワクチン群とプラセボ群にランダムに割り付けられ、効果および安全性が評価されている。ちなみに投与量は成人と同じ30μg(マイクログラム)だ。発達途上の12~15歳に、成人と同量のワクチンを打てば過量になるかもしれないという懸念があった。

この試験では、2回目接種後の38度以上の発熱は20%、倦怠感は66%で認められたが、これは18~65歳を対象とする先行試験での17%、75%と同レベルだった。懸念された副反応は問題とならなかった。

一方、効果に関しては、プラセボ群では16人がコロナに感染したのに、ワクチン接種群では誰も感染しなかった。有効性は100%ということになる。この臨床試験はデルタ株流行以前のものであり、有効性の評価は注意が必要だが、安全性に関しては有望な結果だ。

ファイザーと並びワクチン開発をリードするモデルナの報告も同様だ。彼らが5月25日に発表した臨床試験には、12~18歳の約3700人が登録されたが、2回接種後のコロナ予防効果は100%で、副反応も大きな問題とはならなかった。

このような臨床試験の結果を受けて、5月10日、アメリカ食品医薬品局(FDA)は、12~15歳に対するファイザー製のワクチンの緊急使用許可を認めているし、6月10日にはモデルナがFDAに緊急使用許可を申請した。

アメリカは、より低年齢層への接種も進めている。ファイザーとモデルナは治験を拡大しており、5~11歳でも進行中だ。早ければ、冬場の流行期までには緊急使用許可が下りる。

懸念は心筋炎・心膜炎

かくのごとく、アメリカでは小児への接種を積極的に推進している。では、現時点で、何が問題となっているのだろうか。世界の専門家の関心を集めているのは心筋炎・心膜炎だ。心筋炎・心膜炎は、ウイルス感染に伴う自己免疫反応や、コロナ以外のワクチン接種後にも発症することが知られている免疫合併症だ。多くは無症状、あるいは軽症で、後遺症なく治癒するが、まれに重症化することがある。

6月10日、CDCは、30歳以下でファイザーあるいはモデルナ製のmRNAワクチンを接種した人のうち、475人が心筋炎・心膜炎と診断されたと発表した。ほとんどは後遺症なく回復していたが、15人は研究発表の時点で入院し、3人は集中治療室に入っていた。

特記すべきは、大半が若年者の2回目接種後に起こっていたことだ。このことについては、イスラエルからも同様の研究結果が報告されている。

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