2学期「子どもの感染拡大防止」に欠かせない視点 デルタ株で重症化の例も、ワクチン接種は有効か

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令和2(2020)年度の第2次補正予算では、抗原検査の確保のため179億円が措置されており、大量の在庫を抱えている。何とかして使い切らなければならない。1月22日には、「無症状者に対する抗原簡易キットの使用」を推奨する通知まで出している。丁度、CDCが、無症状感染者に対する抗原検査の限界を示す論文を発表した時期に正反対の通知を出していたことになる。在庫一掃が目的と言われても仕方ない。残念ながら、尾身茂コロナ対策分科会会長などの専門家からも、このような声は聞こえてこない。

検査と並ぶ重要な対策がワクチン接種だ。デルタ波に対しては、ワクチンを打っても感染は完全には予防できない。このことを世界が思い知ったのは、7月初旬に、アメリカで開催された独立記念日のイベントで469人の集団感染が発生したときだ。特記すべきは、346人が接種を済ませていて、彼らが排出するウイルス量が、接種者と大差なかったことだ。ワクチンを打っても、デルタ株には感染するし、周囲にもうつしてしまう。集団免疫戦略は見直されることになった。

だが、ワクチンの意味がなくなったかと言えば、そんなことはない。ワクチンを打てば、重症化は予防できるからだ。イスラエルの報告によると、60歳以上の未接種者の重症例は10万人当たり85.6人だが、接種完了者は16.3人と、81%減少している。これは、日本の医師の感覚とも一致する。

アメリカの政府系機関や民間企業などでワクチン接種の義務化が進んでいるのは、集団免疫のためではない。個人を守るためだ。カナダ連邦政府も接種を義務化したし、ギリシャでは未接種者の就労を制限する方向で調整が進んでいる。

アメリカ、イスラエルなどは12歳以上へワクチン接種

子どもも例外ではない。CDCは、5月12日に12~15歳に対して、ワクチン接種を勧告し、6月21日、イスラエル政府もそれに倣った。その前日に、日本では文科省が、接種への同調圧力を恐れて、学校での集団接種を推奨しないと発表したのとは対照的だ。判断の基準がワクチンの効果や安全性でないのが日本らしい。その後、遅ればせながら、8月16日にはドイツも12~17歳の全員にワクチン接種を推奨した。

もちろん、子どもへの接種には懸念もある。それは安全性だ。将来がある子どもたちへの接種は慎重でなければならない。現在、どの程度までリスクがわかっているのだろうか。結論からいうと、かなり安全だが、リスクは否定できない。

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