ウィシュマさんへの「残酷な扱い」が起きた仕組み このまま終わっては同じことが繰り返される

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スリランカ人のウィシュマ・サンダマリさんが収容後197日目に死亡した名古屋入管(Noriko Hayashi/The New York Time)

責任ある立場である日本の出入国在留管理庁の幹部よりも無責任な人間がいるだろうか? 日本では、銀行員やコンビニの従業員が経理のミスをすると解雇される。CEOは会社のパフォーマンスが悪い場合、有意義な形で自身の給与を減額する。著名な外国人がコロナウイルスの自主隔離を破ると、メディアに氏名を公表され、場合によっては国外追放される。

しかし、入管職員は自分たちの管理下での外国人収容者の死亡に責任があってもけっしてその因果を被ることはない。2007年以降、18人の外国人が入管施設に収容中に死亡した。だが、これを理由に処罰された人はいないし、給与が減額されたり、降格させられたりもしていない。氏名すら公表されない。私たちは犠牲者たちの氏名しか知らない。最近、犠牲者として公表されたのは、スリランカ人のウィシュマ・サンダマリさん──「ウィシュマ」さんだ。

入管の「隠蔽体質」を露呈

2021年8月10日、入管庁は3月6日に名古屋出入国在留管理局で亡くなったウィシュマさんの死に関する最終報告書を提出した。この報告書は、収容所での死を真相究明する取り組みとして、これまでよりは真剣に見える点はたたえなければならない。しかし残念ながらたたえられる点はそれだけだ。

今回の報告書は日本の入管が抱える問題、すなわち、その隠蔽体質、を改めて露呈した。

そもそも報告書は第三者が検証をして書いたものでなく、入管がまとめたものだ。名古屋入管はウィシュマさんが亡くなった部屋への弁護士の立ち入りを拒否したうえ、「すべての外国人が見る必要がある」というウィシュマさんの遺族の嘆願にもかかわらず、監視カメラの映像の公開も拒否。映像を遺族に公表する前に、入管は遺族に文字起こしした記録を渡したが、その記録を持ち出すことは許されなかった。

さらに、遺族がウィシュマさんの治療に関する資料の開示を請求した際には、ほぼ完全黒塗りの1万5000枚の文書を送りつけ、15万6760円を請求してきた。

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