ここからの工程は作る紙によって多少異なるが、石巻工場で最新の2007年稼働のN6と呼ばれる抄紙機ではこんな具合になる。
まず、パルプ入りの水が2枚のメッシュの板の間に吹き付けられるところからスタートする。和紙を抄く場面、海苔をつくる工程をイメージしてほしい。その時に使われる網に上下を挟まれたような格好で、連続的に、高速で次のプロセスに送られる。
次のプロセスは脱水だ。塗布した原料を毛布のようなもので挟み、水分がぐっと減らす。古い洗濯機をご存じの方なら、ハンドルを手回するタイプの脱水機をイメージしていただくとかなり近い。
脱水された原料は続いて乾燥され、紙となる。しかし、これで完成ではない。さらに、印刷しやすくなる下地を塗り、表面の凸凹をならし、圧力をかけて光沢を出し、最後に巻き取って完成だ。
石巻工場では現在、8台の抄紙機が稼働している。
紙は途切れることなく作られる
ところで、抄紙機と聞いてどれくらいのサイズのものを想像するだろうか。
600億円をかけて設置されたN6は、なんと、長さ240メートルもある。山手線12両分だ。その巨大な抄紙機が、ものすごい熱を発し、ものすごい音をたてながら、幅8416ミリの紙を1分間で最長1800メートルも生産する。
インカム越しに技術室の畑中広巳さんが「1000分の1ミリ単位でコントロールしています」という。最大時速100キロ超の速度でつくって、厚みの誤差はわずか1ミクロン程度しかないのだ。
抄紙機は一種類の紙だけを作っているわけではない。色や厚さ、重さの違う紙をスケジュール通りにつくっている。抄紙機は、和食もイタリアンも安定的に美味しく、24時間調理し続けるシェフのような存在なのだ。
ある紙から別の紙に切り替えるときも、運転は止めない。ではどうやって切り替えるかというと、パルプを含んだ液体を変え、抄紙機の設定を変える。だから、ある紙から別の紙から切り替わるときには、和風イタリアンのような状態のブレンドの紙が存在することになる。紙は種類が変わってもずっとつながって作られるのだ。
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