高校バスケ強豪校が告白「コロナ出場辞退」の裏側 大会や競技により「出場規定まちまち」の実態

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これについて、「スポーツマンのこころ」と銘打つ講義で6万数千人に一流アスリートになるための心得を伝えてきた岐阜協立大学経営学部教授の高橋正紀さん(58)は「あの球児たちの姿を欧米のスポーツ先進国の人たちが見たら、衝撃を受けると思います」と語る。

スポーツ先進国ではスポーツは楽しむためにやるもの

「欧米では、多くの人々にスポーツは楽しむためにやるものという概念があります。例えば何かスポーツをしようとしたとき、おのずと総当たり(リーグ戦)でやろう!となります。負けたら終わりのトーナメントだと1回戦で負けるチームが楽しくないよねという考え方です。日本でも大人たちはJリーグもプロ野球もそうしているのに、なぜ育成年代に限ってトーナメントなのか疑問です」

短期間で一気に試合を消化するトーナメント戦は、負けたら終わり。1つでも勝って生き残るため勝利至上主義になりやすい。つねに同じメンバーで戦うので一握りの選手への負担も大きい。一方のリーグ戦は長い期間を全チーム同じ数の試合を経験できる。例えば1週間に1回ずつ試合があれば、試合で出た課題を練習し、次の試合で試し達成感を得る。この繰り返しが成長を生むのだ。

甲子園もインターハイも欧米のようにリーグ戦主体であれば、大会辞退などせずに済んだかもしれない。リーグ戦は、両チームが自分たちの都合に合わせて日を替えて試合ができる。すべてのチームが同じだけ試合ができるので「負けたら終わり」という余計なプレッシャーを、選手や指導者に与えずに済む。そうすれば、社会問題にもなっている指導者の選手に対する暴力的、抑圧的な態度の是正にもつながるに違いない。

そもそも、小学生年代から各年代で同様の全国大会が開催されている日本は、先進国の中でも非常に珍しい存在だ。例えば、欧州では中高の育成年代にトーナメント式の全国大会はあまり開催されないし、米国でもほとんどの場合、州大会止まり。ブラジルでは数十年前に一時期全国大会を開催したが、勝つことばかりに目が向いて個性豊かな選手が出てこなくなったため中止したと聞く。

コロナのみならず、感染症は今後十数年に一度といった頻度で出現するとも言われる。気候変動で、夏の大雨は来年以降も免れられないだろう。体温超えの日が増え亜熱帯化する日本の真夏に、戸外で体への負担の大きいスポーツをどの程度やらせるべきかという議論も必要だろう。

A君は取材の最後に、こう話した。

「僕のように感染して周囲に迷惑をかけたと落ち込んでいる人に、苦しいことがあったら仲間や先生に助けを求めればいいよと伝えたい」

感染した個人を責めたりせず、教師と仲間が一丸となって支えた近畿大学附属高校バスケット部のようなケースがすべてではないだろう。上述したリーグ戦への転換など、ユーススポーツの大会のあり方を今こそ見直すべきだ。

島沢 優子 フリーライター

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しまざわ ゆうこ / Yuko Simazawa

日本文芸家協会会員。筑波大学卒業後、広告代理店勤務、英国留学を経て日刊スポーツ新聞社東京本社勤務。1998年よりフリー。主に週刊誌『AERA』やネットニュースで、スポーツや教育関係等をフィールドに執筆。

著書に『世界を獲るノート アスリートのインテリジェンス』(カンゼン)、『部活があぶない』(講談社現代新書)、『左手一本のシュート 夢あればこそ!脳出血、右半身麻痺からの復活』(小学館)など多数。

 

 

 

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