高校バスケ強豪校が告白「コロナ出場辞退」の裏側 大会や競技により「出場規定まちまち」の実態
もう1つ、高校生アスリートにとって難しかったのが、競技や大会によって出場に関する規定が異なることだ。
まず、インターハイは競技によって規定が異なる。全部で30競技あるが、レスリング、柔道、空手、ボクシングは大会前に感染の有無を調べる検査を実施しての判断となるが、バスケットは男女とも1回戦の2週間以内に1人でも陽性者が出たら出場を辞退しなくてはならない。検査は実施されないため自己申告となる。
高校野球はまたやり方が異なっている。こちらはPCR検査を、大会前、初戦勝利後、準々決勝後と1チーム最大3回(延期のため最終的に4回)実施。これが個別感染か集団感染か、参加か否かを決める判断基準となる。
宮崎商は陽性者13人に加え濃厚接触者が8人となったため集団感染と判断された一方で、大会前に部員3人が陽性となったものの濃厚接触者がいなかった作新学院は個別感染と判断された。22日現在で2校が辞退している。
同じ競技でも大会によって違う規定
さらにいえば、高校生の大会ではないものの、東京五輪は感染者の濃厚接触者となった選手について、試合開始6時間前を目安に実施したPCR検査で陰性なら、出場可能となる。
近大附属は、A君の発症後に部費を使って部員らのPCR検査を実施。全員が陰性だったため、学校から大会本部等に参加の許可を求めたが「ルールはルールなので」との回答だった。つまり、五輪は開始直前、6時間前の検査で陰性ならば出場OKで、インターハイは2週間前に陽性者が出たら棄権となり、しかも検査が必要との規定もない。
この違いについてA君は「オリンピックは6時間前と聞いて、いいなあと思いました。僕らも検討してもらいたかったです」と複雑な胸の内を明かした。
世界のスポーツの祭典と高校生の全国大会を比べるなと言われるかもしれないが、アスリートとして大会に賭けてきた思いや時間の価値は変わらないはずだ。
A君を支えてきた顧問の大森健史さん(46)は「誰がかかってもおかしくない状況で(A君を)責められなかったですね。バスケットのように検査をしない競技のほうが、インターハイは多い。無症状の生徒も一定程度いるわけなので、そうなると安心安全な大会と言えるのか疑問です」と振り返る。
安心安全という言葉を聞くと、球児たちの姿がよみがえる。今年、大雨の中断が相次いだため、甲子園で夜9時半まで試合が行われたり、選手がずぶぬれの中でプレーする姿を私たちは目の当たりにした。なぜここまで無理をしてスポーツをしなくてはならないのか。
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