北陸代理戦争の仁義なき場外戦

実録が現実を喰う! 『映画の奈落』を読む

やくざ映画にドンパチはつきものである。だが、映画と全く同じシチュエーションで実際にモデルとなった組長が殺害されるーーそんなミステリーさながらの事件を引き起こした、前代未聞のやくざ映画があった。

映画『北陸代理戦争』は、”北陸の帝王”と呼ばれた福井川内組組長、川内弘をモデルにした「東映実録やくざ映画」である。映画と現実が連動し、シナリオが進行中のやくざの抗争に影響を与えたという逸話のインパクトは、他の追随を許さない。

この映画、様々な意味でいわくつきの映画と言われている。当初は、東映のヒットシリーズ『新・仁義なき戦い』の最終作として企画されながら、主演の菅原文太が降板したため、『仁義なき戦い』のタイトルを外される。撮影が始まるや否やトラブルが続出し、予告編に登場する渡瀬恒彦は事故のため映画に出演していない。挙句の果てが、俗に三国事件と呼ばれる事件での新聞沙汰である。

2人の男の人生

この記事は書評サイト「HONZ」の提供記事です。

そして事件が起こるまでの経緯には「やくざ」と「映画」、畑こそ違えど2人の男の似通った境遇が大きく関与していた。映画のモデルとなった川内弘・組長の野心、そして脚本家・高田宏治の挑戦である。

川内弘は1977年当時、全国14県に支部を置き、400名の組員を擁する日本有数のやくざ組織であった。だが、山口組内で最も大きな勢力を誇る菅谷組の下部団体という苦哀を味わう中で、次第に親分格の菅谷政雄と反目し合うようになっていく。

一方で脚本家・高田宏治には、『仁義なき戦い』シリーズで名を馳せた脚本家・笠原和夫という超えねばならぬ壁があった。『仁義なき戦い 完結編』における脚本家の座を、笠原の降板という形で引き受けることになった当時、高田へ向ける周囲の目は冷ややかなものであったという。だが高田は持ち前の批評眼を活かし、新境地を開くために苦闘する。

その人を倒さんと男になれん、それが北陸やくざいうもんでね…… わたしはその人を倒して男になった。

『北陸代理戦争』の取材中、高田が川内のこの言葉を聞いて感銘を受けた瞬間、運命の扉は開かれた。『北陸代理戦争』がクランクインしたその日、川内は菅谷によって破門にされる。そして映画がクランクアップした日から約1ヶ月半後、まるで映画の襲撃場面をそのまま再現したかのように、川内は4人の男によって襲撃され、喫茶店のソファで射殺されてしまうのだ。

本書は、この映画がどのように制作され、そしてどのように三国事件にまで至ったかを、関係者の証言と膨大な関連資料により紐解いていく。中でも特筆すべきは、シナリオ分析を軸に構成されている部分であるだろう。実際の川内組の歴史とシナリオの第一稿、決定稿の違いを緻密に分析していくことにより、脚本家・高田が何にこだわり、何を主題としたのかが明確に見えてくる。

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