陸自の機関銃装備体制に穴がありすぎて不安な訳 必要な性能品質をリーズナブルに調達できてない

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陸自の装甲車輌は主砲の同軸機銃に7.62ミリの74式機銃を使っているが、弾薬は旧式の64式小銃と同じで7.62ミリNATO弾の減装薬弾を採用している。これは64式機銃採用時に日本人の体型では反動が強すぎるということで採用されたが、その分、NATO弾に比べて威力が低く、射程距離も短い。

下段にあるのが74式機銃(写真:筆者撮影)

64式がほぼ退役した現在、64式との弾薬の共用性を重視し、同軸機銃に減装薬弾を使う必要はないが、そのままに使用されている。

だがこれだとアメリカ軍との弾薬の相互互換性はない。NATO弾をそのまま使用すると暴発や作動不良が起こる可能性が高い。NATO弾を使用できるように調節しても射程も弾道も違うので命中が期待できない。

陸自では狙撃銃や特殊作戦群が使うガトリングガン、オスプレイに搭載されるM240機銃を採用しているが、これらでは7.62ミリNATO弾を輸入して使っている。このため国内でも補給に混乱が起こる可能性があるし、兵站の負担も大きい。7.62ミリ弾は本来NATO弾に統一するのが望ましい。

機械化部隊の利点を自ら捨てている

事実上、普通科の主力APC(装甲歩兵輸送車)である軽装甲機動車は非武装であり、96式装甲車のような12.7ミリ機銃を積んでいるわけでもない。そして運転手や車長含めて全員が下車して戦う。世界を見渡しても、このような運用をしているのは陸自ぐらいであろう。このためAPCからの火力支援も受けられない。機械化部隊の利点を自ら捨てていると解釈できる。

96式装甲車に搭載されている豊和工業が開発した40ミリ96式自動擲弾銃にも問題がある。作動不良がひどくて実質上調達が中止になっているが、部隊ではいまだに使用されている。しかも弾薬の口径は40ミリと他国のグレネードランチャーと同じながら、NATO規格の40x53mm弾ではなく、独自の40×56mm弾である。

96式自動擲弾銃(提供:陸上自衛隊)

このためアメリカ軍との相互互換性はない。水陸機動団で導入された水陸両用装甲車AAV7にはFMS(有償軍事供与)で、アメリカ軍と同じMk19ランチャーが装備されているが、これは96式の性能、信頼性が低かったためだろう。国産の40ミリ弾も使用できない。わざわざ世界の標準と異なる弾薬を採用したのに軍事的な整合性はない。「非関税障壁」として国内弾薬メーカーの仕事を確保するためだろうか。

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