「ローカル飲食チェーン」コロナでもしぶとい理由 551HORAIや福田パンなどが見出した「生存戦略」
それにしても、ローカル飲食チェーンはなぜ全国展開しないのだろうか。全国とは言わずとも儲かっているなら他エリアに勢力を伸ばしたり、あるいは他業種に事業拡大したりするのがビジネスの常例のはずだが。
「たとえば、商品のクオリティをキープするためにはローカルに留まり続ける必然性があるんです」
四日市市を拠点に三重県内で16店舗(2021年7月時点)をチェーン展開する「おにぎり桃太郎」の場合、本社のセントラルキッチンで作られるおにぎりには保存料を使わないため消費期限は1日限り。美味しい状態で食べてもらうには店舗が近い場所にあるのが必須条件だ。
さらに、その日の夕方からセール価格にして売り切ることでお客さんにも喜ばれるし、フードロス対策にもなる。
551HORAIは、豚まんにおける生地の品質維持を考えて工場から150分以内にしか出店していない。また本部で管理できる店舗数も60店舗ほどと考えているため(2021年7月時点で58店舗を展開中)、必然的に商圏サイズは関西圏のみとなる。ローカル飲食チェーンにとって、「近いは正義」なのだ。
「加えて、SNSで地元民がチェーン店の話題で盛り上がっていると、他の県民は羨ましくなったり、嫉妬心まで湧いたりします。その土地に足を運ばないと食べられないと知ったら、どうしても実際に食べてみたくなりませんか?」
いつでもどこでも食べられる強みを持つ全国チェーンに対し、ローカルチェーンにとってネット社会は魅力を発揮するのに格好の場なのだろう。
食文化でもあり、観光資源でもある
本書を読み一貫して感じるのは、ローカル飲食チェーンはもはや立派な財産であるということ。市民の胃袋を満たすカロリー提供源であり、土地の文化や気質までをもうかがわせる食文化の一部でもあり、さらには観光資源としての可能性も秘めている。
「ビジネス的な視点は意識しつつ、観光ガイド的な楽しさを盛り込みました。どのチェーン店も最初に食レポの部分をしっかり入れたのも、お客さん目線でのワクワク感を読み手に感じてほしかったから。何が看板メニューでどんな美味しさなのか、店内の雰囲気やサービスはどうなのか。結局、何度も食べたい、もっと深く知りたいという欲求の出発点ってそこだと思うんです」
一極集中による過疎化や行政の財政難など、何かと暗い話題がつきまとう地方にあって、ローカル飲食チェーンが繁盛しているのは救いにすら思えてくるほど。
「コロナ禍で地方が見直されている今でも、テレビで扱われるのは東京のお店だったり、誰もが知る全国チェーンだったりします。それに少しでも抗えればうれしいです」
パンデミックの完全終息がまだまだ見えない今、強くてうまいローカル飲食チェーンの奮闘に注目したい。
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