1~3とは少し性質が変わりますが、コロナ禍で新しいハラスメントも問題視されています。新型コロナウイルスに感染したことに対して、執拗に責任を追及したり、感染者が職場復帰後に不当な扱いを受けるというコロナハラスメント(コロハラ)が増加しています。
また、ワクチンの接種は個人の判断に委ねられているものの、未接種者に接種を強要したり、不当な扱いをしたりするワクチンハラスメント(ワクハラ)も社会問題になりつつあります。
職場でこのようなハラスメントを受けた結果、労働者が精神疾患を発症したというような場合においては、セクハラやパワハラに起因する精神疾患と同様、労災の認定を受けることができる可能性があります。
労災と認められなかった場合はどうする?
では、労災はどのように審査され、認められなかった場合はどのように対処したらいいのでしょうか。まず、労災の各種給付を受けるための申請書類は、事業所を管轄する労働基準監督署に書類を提出し、審査を受けます。
円滑に労災の認定を受けるためには、申請書類において、新型コロナウイルスへの感染が業務や通勤に起因する可能性が高いことを、できるだけ具体的に説明してください。
また、上述した厚労省が公開している労災認定事例においても、多くの事例において「私生活での行動等から一般生活では感染するリスクが非常に低い状況であったこと」が労災認定されたポイントの1つになっていますので、安全に気をつけて日常生活を送っていたこともしっかりと説明をすることが重要です。
そして、もし、所轄労基署から労災の認定を受けられなかったとしても、法的に「労災でない」と決まったわけではありませんので、諦めないでください。労災の認定が受けられなかった場合には、審査請求・再審査請求という制度があります。
所轄労働基準監督署が労災認定を却下し、その判断に納得がいかない場合は、労働保険審査官に審査請求を求めることができます。そして、労働保険審査官の判断によっても労災の認定が得られなかった場合は、労働保険審査会に再審査請求を行うことができます。審査請求・再審査請求によっても労災認定が得られなかった場合は、裁判に訴えることが可能です。
労働基準監督署から労災の認定を受けられなかったとしても、このような救済措置があることを覚えておいてください。
しかし、審査請求・再審査請求や裁判を行うためには、長い時間と弁護士報酬などの費用も発生します。目下、新型コロナウイルスへの感染やそのリスクに苦しみながら働く人々に、このような時間的・金銭的負担を課すことは、酷ではないかと思います。
雇用調整助成金の支給要件が緩和されたり、申請書類が簡素化されたのと同様、非常時であることを鑑み、迅速に労災認定を受けられるような行政運用が望まれていると思います。
コロナ禍の中、多くの人々が生活や社会を維持するために働いています。
働く人や事業主は、万が一の時には補償の受け漏れがないよう、十分な法的知識持ってほしいと思います。そして、行政に対しても、「このような場合には労災補償が受けられる」という事例をもっと積極的にPRしたり、労災認定の基準を広げるなど、国民に寄り添った対応を期待したいところです。
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら