「感染・ワクチン副反応」労災認定はどんなとき? コロナ禍の今、押さえたい「労災」のポイント

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通勤途中に転んで骨折したなどであれば通勤災害であることは明白なのですが、通勤の満員電車が原因で新型コロナウイルスへ感染したという場合、通勤災害として労災の適用を受けることはできるのでしょうか。

この点、通勤電車で感染したことを客観的に証明することは非常に困難です。

例えば、「単身世帯者で、通勤以外では満員電車を利用せず、密になる場所へも行かず、休日も自宅で過ごしていた」というような状況証拠がある場合には、通勤災害と認定されてもいいのではないかと筆者は考えます。しかし、実際には因果関係を示すのはかなり難しいでしょう。

まだ事例の蓄積が無く、労災に該当するか否かの判断権限を持つ労働基準監督署が実際にどのような判断を示すかは未知数ですが、通勤に関連して新型コロナウイルスに感染した可能性がある場合にも、労災の申請を行うことができるということは覚えておいていただきたいと思います。

ただし、通勤途中で寄り道をする場合、生活必需品の買い出しなどであれば問題無いのですが、長時間の買い物をしたり、飲食店に立ち寄る(生活に必要なテイクアウトや定食を食べることなどは可)ことなどをした場合は、通勤経路を逸脱したとして、労災認定を受けられなくなってしまいますので、この点はご注意ください。

ワクチンの副反応は原則労災の対象外

(3)ワクチン接種により健康被害があった場合

現時点の厚労省の見解では、ワクチン接種により健康被害があった場合、たとえ職域接種や事業主の勧奨により接種したとしても、原則として労災の対象外としています。

ワクチン接種については、通常、労働者の自由意思に基づくものであることから、業務として行われるものとは認められず、これを受けることによって健康被害が生じたとしても、労災保険給付の対象とはなりません。

(厚生労働省 新型コロナウイルスに関するQ&A(労働者の方向け)5 労災補償 問10)

ただし、医療従事者や高齢者施設従事者などがワクチン接種により健康被害を生じた場合は、労災扱いとなります。

医療従事者等に係るワクチン接種は、労働者の自由意思に基づくものではあるものの、医療機関等の事業主の事業目的の達成に資するものであり、労災保険における取扱いとしては、労働者の業務遂行のために必要な行為として、業務行為に該当するものと認められることから、労災保険給付の対象となります。なお、高齢者施設等の従事者に係るワクチン接種についても、同様の取扱いとなります。

(厚生労働省 新型コロナウイルスに関するQ&A(労働者の方向け)5 労災補償 問10)

それでは、医療従事者や高齢者施設の従事者でなければ、ワクチン接種の副反応で労災扱いになる可能性は無いのでしょうか?

この点、事業主が従業員へ事実上強制的にワクチン接種を求めた場合は、労災に該当する可能性があると考えます。例えば、ワクチン接種をしなければ、解雇、左遷、減給するなどと伝えたり、執拗に接種を求める面談を繰り返されたりして、労働者本人の意に反して、やむなくワクチン接種をしたようなケースです。

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