サイバー犯罪の被害が拡大するにつれ、新たなデータ・セキュリティ技術が投資家の関心を集めている。8月3日、コンピューターの内蔵メモリーのデータ保護を手がける新興企業の安芯網盾が、1億元(約16億8700万円)を超えるシリーズAの資金調達を完了したと発表した。リード投資家は中国のプライベート・エクイティ・ファンドである高瓴創投だ。
内蔵メモリーのデータ保護は、新方式のサイバーセキュリティ技術の1つである(訳注:専用のハードウェアを用い、あるアプリケーションが、ほかのアプリケーションが使用しているメモリー領域にアクセスできないようにする技術)。
「コンピューターシステムはハードウェア、基本ソフト(OS)、アプリケーションソフトの3層構造になっている。過去20年間、サイバーセキュリティ技術は基本ソフトとアプリケーションの階層をカバーしてきた。わが社はコンピューターシステムの土台であるハードの階層に焦点を当て、セキュリティ問題の解決を図る」。安芯網盾のCEO(最高経営責任者)を務める姜向前氏は、財新記者に対してそう説明した。
従来のサイバーセキュリティ技術と比べて、内蔵メモリー保護の難易度は高い。姜氏によれば、(サイバー攻撃に対する)個々のアプリケーションソフトの防御は比較的容易だ。しかし(システムの土台により近い)基本ソフトやハードの防御は、技術的解決に複雑さと困難さが伴う。
安芯網盾は中国のインターネット検索最大手の百度(バイドゥ)でモバイルセキュリティの首席専門家を務めた姜氏と、アンチウイルス仮想マシンの技術専門家の姚紀衛氏が、2019年に共同で創業した。2人は著名な理工系大学であるハルビン工程大学の卒業生だ。
主要顧客は大企業や政府機関
安芯網盾の主要顧客は、業務プロセスが複雑で多数のIT設備を保有する大企業や政府機関である。同社が公表した顧客リストには、姜氏の出身企業の百度や、全国海関(税関)情報センター、ソフト開発大手の金山軟件(キングソフト)などが名を連ねる。姜氏によれば、そのほかの顧客は金融、エネルギー、交通、科学技術などの業界が多いという。
これらの大企業や政府機関の業務量は膨大だ。コンピューターシステムに脆弱性が見つかった場合、それを修正するパッチを適用する過程では、通常は業務を中断しなければならないため大きな痛みを伴う。そのため(業務に支障を来さない)新たなサイバーセキュリティ技術には大きな需要がある。
「中国国内では4000万台のサーバーが稼働中だ。今後はこの市場に対する(内蔵メモリー保護技術の)浸透率を引き上げていく」。姜氏はそう意気込みを語った。
(財新記者:何書静)
※原文の配信は8月4日
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