中国のAI(人工知能)半導体メーカーの地平線機器人科技は7月29日、自動運転向けの新型SoC「征程(ジョンチョン)5」を発表した(訳注:SoCはシステムオンチップの略称。CPUや通信モデムなどの基幹機能を1つのチップにまとめたもの)。
征程5は16台の車載カメラの画像データ処理をサポートし、「レベル3」および「レベル4」の自動運転に対応できる。なお、レベル3はクルマの運転をシステムが担い、緊急時には人間のドライバーが対応する水準、レベル4は高速道路などの限られたエリア内で、すべての運転操作をシステムが担う水準を意味する。
地平線機器人によれば、征程5は2021年5月にチップの試作に成功。さまざまなテストを経て、2022年後半に量産を始める計画だ。12nm(ナノメートル)のプロセス技術で製造され、演算性能は128TOPS(毎秒128兆回の演算が可能)に達する。
「(中国の自動車最大手の)上海汽車集団を含む中国の自動車メーカー8社が採用の意向を示している」。地平線機器人の創業者兼CEO(最高経営責任者)の余凱氏は、征程5の発表会でそう述べた。
だが、それらの自動車メーカーが実際に征程5を採用するかどうかはまだ不透明だ。発表会に出席した来賓のなかでは、上海汽車集団傘下で「栄威(ロンウェイ)」ブランドの乗用車を手がける上汽乗用車の総経理(社長に相当)の楊暁東氏が、同社のSUV「栄威RX5」の次期モデルに征程5を搭載する可能性を明言した。しかしそのほかのメーカーは、征程5を使ったテスト開発に取り組むことを表明するにとどまった。
次世代SoCでは演算性能400TOPS超え目指す
自動運転向けSoCの世界市場では、アメリカのエヌビディア製が最も多く採用されている。中国メーカーも例外ではない。2020年9月、中国の新興EV(電気自動車)メーカーの理想汽車は「2022年に発売する新型車にエヌビディアの次世代SoC『Orin(オーリン)』を搭載する」と発表した。2021年1月には、上海汽車集団が電子商取引(EC)最大手の阿里巴巴集団(アリババ)と共同で立ち上げた新興EVブランドの智己汽車が、エヌビディアの現行SoC「Xavier(エグゼビア)」の採用を明らかにした。
エヌビディアが2018年に発表したエグゼビアは12nmのプロセス技術を採用し、最大32TOPSの演算性能を持つ。オーリンは2022年の生産開始を予定しており、7nmのプロセス技術を採用。その演算性能は最大254TOPSに達する。
地平線機器人の共同創業者である黄暢氏の説明によれば、征程5のプロセス技術に12nmを採用したのは(製造工程上の)リスクを下げ、チップの信頼性を確保するためだ。次世代SoCの「征程6」では7nmの採用を予定しており、演算性能は400TOPSを超えるという。
(財新記者:張而馳)
※原文の配信は7月30日
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