須藤:「CDET!」という番組はMUSIC ON!TVのエンタメ情報番組で、毎週土曜日に生放送でやっているものですけど、この企画は地上波局との差別化から生まれたんですよ。たとえば人気のアーティストがライブを行うと、それがニュースとして翌日の地上波のワイドショーで取り上げられる。でもそこで流れるライブ映像は、とっても短いですよね。ワイドショーの芸能情報では取り上げる情報の数が多い割に、ライブの次の日にいち早くお届けするという目的もあって、せいぜい1分、2分くらいしか放送されないことが多い。
でもあのライブと映像って、アーティストにとってはいちばんのプロモーションになるもので、時間も、おカネもかけて収録しているものなんですよ。それをほんの一部分しか流れていないのは、ファンやお客様の目線からすると、すごくもったいないなと思っていたので、毎週土曜日にどこよりもそれを長くお届けする番組ができないかなと思ってつくりました。
塩野:オリラジの藤森慎吾さんが店長を務めるバル(居酒屋)に、音楽好きの常連が集まって、ワイワイやるという設定なんですよね。
須藤:なぜそういう設定にしたかというと、いいアーティストのいいライブをどこよりも長くたっぷり届けますよ、という内容を一方的にお伝えするだけじゃつまらないから。それでいろいろな芸能人やアーティストをその店の常連客という設定にして、彼らも番組を見ている人と同じように、モニターに映るライブを見て感想を言い合うところを視聴者に見てもらうようにしたわけです。自分の好きなアーティストがほかのアーティストのニュースやランキングに反応する姿を見せることで、音楽をもうちょっと身近なものに感じられるんじゃないかと。
一流の人がしている“見えない努力”を伝えたい
塩野:その番組で須藤さんはどういう役割を果たしているんですか?
須藤:文字どおりの企画だけです。実際に制作するのは週替りのプロデューサーや、全体を統括する総合演出、作家が番組を構成しています。
彼らが自分の意志をもって映像を撮りに行って、それを流すかどうかとか、どれくらいの長さにするかなどの最終ジャッジも僕の一歩手前のところで全部成立するようになっているので、僕は本当に企画しただけ。あとは毎週スタジオで眺めているという(笑)。
塩野:バルにやってくるアーティストには、アイドルもいれば、ふつうの歌手の人もいますよね。どんな方も同じ「アーティスト」というとらえ方でやってるんですか?
須藤:そうですね。そこが狙いでもあります。アイドルにせよ、実力派と目されている人にせよ、ニコ動から出てきた人にしろ、やっぱり何かに秀でている人って、表には出さないけれど、人一倍鍛錬したり勉強したりしているんですよ。内面も外見も磨いている。バルを舞台にしたのは、ジャンルレスというか、アイドルもJ-POPの人も、はたまたアーティスティックなロックバンドも、いろんな人を一列にできないかなと思ったからです。彼らが普段あまり見せないような、実は長けているところとか、努力しているところとかを、できるだけ押し付けがましくなく引き出せる番組が作りたかったのです。個性がすっと垣間見えるような。たとえば塩野さんと僕がこんなふうに向かい合うと、塩野さんは僕から何か引き出してくれようとしてガチンコになっていくんですけど、カウンターにみんな一列に並んでいると、テレビなのにそれが無理なくできる。
須藤:たとえば具体的なお名前は控えますが、「自分はもともと歌が下手です」という方がいたんですね。アイドルでデビューしたけれど、どうしても歌が下手なので、一生懸命練習するだけじゃなくて、どうやったらいい声が出るのか人間の身体、筋肉の仕組みを知らなければいけないと思った。それでまず喉の筋肉のことを勉強しました、という話をしてくれたことがありました。その結果、その方は世界に通用する声を手に入れたと僕は思っています。そういう話が、バルという形式ではできる。
生放送の中で話が盛り上がるような布陣も考えましたよ。オリラジの藤森慎吾くんがバルの店長で、両脇にジャングルポケットという芸人さんがバイトリーダーみたいなかたちでいる。そしてオリラジの中田敦彦さんが常連客のひとりとして一緒にアーティストたちと並んでいるんですけど、実は中田さんはすごく音楽に詳しいんですよ。ご自身で本を出されていることもあって、詩の世界であったり、アーティストの感性に響く言葉で次々にコミュニケートしていく。
それからやはりプロによる楽曲の解説もほしいので、FUNKY MONKEY BABYSのプロデュースなどで有名な田中隼人さんという方もいる。彼らの間にスーパーアイドルみたいな人がいたらいいな……、みんなにとってのアイドルみたいな人って誰だろうな思ったとき、セクシー女優のRIOさんがいいんじゃないかと。ずっとトップだった人って頭の回転も速くて、細かいところに気も使える、すごい人です。しかもアーティストのみなさんは、会えたうれしさから高揚して思わずいろいろ話してしまう(笑)。そういう発想で毎週生放送をお送りしています。
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