雨上がりの解散が「リアリティショー」化した理由 破天荒な芸人より「モラリスト」が選ばれる時代

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こうした解散に至る事情を事細かに話すにしても、記者会見などではなく、バラエティ番組のなかでそうするのは珍しい。

そこには、いまテレビ自体が、芸人の生き様を見せる時代になっているということがある。芸人にとって笑いのセンスやスキルが第一なことはいうまでもないが、それに劣らぬくらい芸人としての生き様が注目されるようになっているように思える。

サンドウィッチマンの現在の人気の高さも、ネタの面白さなど芸人としての実力に加え、東北復興のための支援活動に尽力する姿が一因になっていることは確かだろう。また逆に、なんらかのスキャンダルがあったとき、そこでどう身を処すかが、芸人としての評価につながってくるようにもなっている。

それは、私たち一般人にとって、芸人が一段と身近な存在になった結果だ。かつての芸人は、往年の横山やすしなどを思い出すまでもなく、少々破天荒なほうが「芸人らしい」と評価される傾向があった。

しかしいまは、そうではない。芸人は私たち一般人の代表であり、ある種お手本として、その一挙手一投足が常に注目の的になっている。そしてそこには、芸人にも世間の常識やモラルを守ることを求める気持ちだけでなく、尊敬の念も含まれている。

だから、芸人が陰でどういうことを考え、努力しているか聞いてみたいと私たちは考える。『あちこちオードリー』(テレビ東京系)のように、なぜ芸人を志したか、苦しいときどう乗り越えたか、いまどんな悩みがあるか、といったことを語るタイプのバラエティ番組が増えているのは、その証しだろう。雨上がり決死隊の解散報告の場が『アメトーーク!』だったことは、そんな芸人といまの世の中の関係を物語っているに違いない。

「歌って踊れる芸人」としてブレイク

振り返ってみれば、雨上がり決死隊の世代は、芸人が生き様をテレビで見せるようになった最初の世代と言えるかもしれない。

若手時代の雨上がり決死隊は、先述のFUJIWARA、チュパチャップス、バッファロー吾郎、へびいちごらとともに、お笑いユニット「吉本印天然素材」のメンバーだった。「吉本印天然素材」は、当時としてはまだ珍しかった、歌って踊れる芸人ユニットとしてブレークし、アイドル的人気を誇った。後に宮迫博之が、『ワンナイR&R』(フジテレビ系、2010年放送開始)において山口智充とのユニット「くず」で歌手として人気を博した原点は、このあたりにもあるだろう。

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