宮迫博之「解散報告会」で見せた3つの大きなズレ 相方・芸人仲間達との関係はもはや修復不可能

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闇営業自体が問題なのではなく、そこで金銭を受け取っていないとウソをついたことが問題だった。YouTubeを始めたこと自体が問題なのではなく、相方に何の相談もなく早急なタイミングで始めたことが問題だった。

お笑いコンビの切っても切れない独特の関係性は、しばしば夫婦にたとえられる。それに従うなら、この報告会は離婚会見のようなものだったと言える。

だが、仲間の芸人も一緒に出ていて、体裁は普段の『アメトーーク』のようなバラエティ番組だったため、かえって形式張った記者会見では聞けないリアルな本音が漏れたりする場面が多かった。

宮迫は、自分の芸人としての特徴について著書の中でこう書いている。

私はちょくちょく才能あふれる人たちに「宮迫の能力をグラフにすると、すごくキレイな六角形になる」と評される。まっ、これは完全に自慢なのだが、よくよく考えてみてもたしかにそうなのだ。というのも、昔からその気になってできないと思ったことがほとんどないのである。
(雨上がり決死隊著『雨上がり文庫』小学館文庫)

万能芸人・宮迫博之の「唯一の欠点」

芸人にはそれぞれ得意不得意があるものだが、宮迫は幅広い分野で自他ともに認める卓越した才能を持っていた。キャラクターを演じるコントができて、身体能力が高く体を張った笑いもお手のもの。トークではボケもツッコミもこなし、MCとして番組を回すこともできる。さらに、芸達者な一面があり、歌も演技も上手い。何をやらせても人並み以上の力を発揮する多才な芸人だった。

だが、そんな万能型の宮迫にも唯一の欠点があった。それは、イジられるのを苦手としていることだ。宮迫は人一倍自己愛が強い人間であるため、他人から欠点を指摘されたり非難されたりするのをどうしても受け入れられないところがある。

芸人同士のやり取りでは、ときとして「イジる・イジられる」という関係が生まれる。これが成り立つためには、イジる側のセンスとイジられる側のセンスの両方が必要だ。だが、宮迫はイジられて受け身を取るのを極端に苦手としている。

イジられてそのまま受け止めれば笑いになるところで、まったく不必要な言い訳や言い返しをする。自分のプライドを守るためだけの空虚な言葉を吐く。その悪癖はこの報告会の中でも何度か繰り返されていた。

もちろん、お笑いコンビの関係性や、それぞれが本当のところはどう思っているかというのは、本人たちにしかわからないし、他人が口を挟むようなことでもない。だが、この報告会を見ているだけでも、彼らの関係がすでに取り返しのつかないものになっていることは十分に伝わってきた。

雨上がり決死隊という偉大なお笑いコンビの最後が、このような形であったことは残念でならない。

(文中敬称略)

ラリー遠田 作家・ライター、お笑い評論家

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らりーとおだ / Larry Tooda

主にお笑いに関する評論、執筆、インタビュー取材、コメント提供、講演、イベント企画・出演などを手がける。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり〈ポスト平成〉のテレビバラエティ論』(イースト新書)など著書多数。

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