決済はキャッシュレスから一気にカードレス時代 「デジタルの利便性」の裏に潜むリスクとの対峙

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キャッシュレス決済、カードレスで顔認証や生体認証……「デジタルの利便性」の裏に潜むリスクについて考えてみる(写真:zak/PIXTA)
スマホ決済の急速な拡大など、決済のキャッシュレス化が進んでいる。テクノロジーの進歩もあって、近い将来、キャッシュレスどころか顔認証などの生体認証で決済が行われるようになると言われるが、利便性を手放しで喜んでよいのだろうか。
決済インフラ入門【2025年版】:スマホ決済、デジタル通貨から銀行の新リテール戦略、次なる改革まで』を上梓した宿輪純一氏が、決済の今後と課題について解説する。

キャッシュレス決済の推進

近年、“決済”に注目が集まっている。日本では伝統的に“現金”決済が強く、2000年あたりでは全決済に占める“現金”決済の割合は約7割程度、それに次ぐ“クレジットカード”決済が約2割程度であった。これは当時、金融関係業務では銀行が力を持っており、銀行がクレジットカードを拡販していたことが一因とも考えられる。その後、“電子マネー”(前払い式支払い手段)や“デビットカード”も少しずつ増加していった。

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決済は、銀行法によって「固有業務」として銀行に限る、というのがそれまでの一般的な考え方だった。しかし、2009年に「資金決済法」が制定され、銀行以外も決済を行えるようになるなど規制緩和が進められた。

金融(Finance)と技術(Technology)の合成語として“フィンテック”(Fin-Tech)という言葉が作られ、まさに金融機関以外の企業が“決済”業界に参入してきた。ビットコインなどの暗号資産(仮想通貨)もフィンテックに含まれる。ビットコインは当初は廉価な“送金”(決済)のために作られた金融商品であった。

さらに、経済産業省がキャッシュレス化の調査・検討を行い、その方針「キャッシュレス・ビジョン」を2018年に発表、日本でキャッシュレス化が政策として推進されることとなった。

現金以外の「キャッシュレス決済(支払い)手段」は、モノの購入とお金の受渡を意識しており、①電子マネー(前払い)、②デビットカード(同時払い)、③クレジットカード(後払い)の3つがある。この“モノ”の購入の推進があることに、金融庁ではなく、経済産業省が進める意義があり、これらの決済手段を拡大させていくことになる。

金融業界とフィンテック業界では、“言葉”も違う。例えば、金融業界ではお金の支払いにより商取引が終了することを“決済”というが、フィンテック業界ではモノを買うときにお金を払うことを“決済”といい、いわゆる送金は“支払い”という。

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