横浜市長選、菅政権の命運をも左右する「大混戦」 再側近・小此木氏敗北なら「菅降ろし」加速へ

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そもそも地元自民組織が分裂して自主投票を決めた地方選挙で、時の首相が一方の候補の支援するのは「聞いたことがない」(自民選対)という異例の事態。永田町では「支持した側近の小此木が負ければ、菅降ろしに直結する」(閣僚経験者)との見方も多く、菅首相周辺も固唾を飲んで戦況を見守る。

今回の市長選をさらに複雑にしているのが、「ハマのドン」と呼ばれる横浜港ハーバーリゾート協会会長の藤木幸夫氏の不可思議な動きだ。同氏は市長選告示前の8月3日に日本外国特派員協会で記者会見。小此木氏について、「私は八郎の名付け親、当選するのは八郎」と語った。

藤木氏はそもそも、IRの横浜港誘致が浮上するまでは菅首相の最大の支援者だった。しかし、「山下埠頭へのカジノ整備は絶対反対」として菅首相とたもとを分かった経緯がある。3日の会見でも、藤木氏は「(港での開業が決まれば)オープンの日に切腹して死ぬ」とまで言い切った。

菅首相はなりふり構わぬ支援に

港湾荷役業「藤木企業」の会長として横浜港の発展に関わってきた藤木氏は、横浜エフエム放送や横浜スタジアムの会長でもあり、繁華街や観光地、ビジネス街を抱える中区と西区に強い影響力を持つ。

その藤木氏は、「最後は小此木氏が勝つ」と言いながら、支持表明した山中氏の応援演説を続ける。「小此木、山中両氏のどちらが勝ってもいいという両天秤」とみる向きもあり真意は不明だ。菅首相はもともと横浜政界では「秋田出身の旅人」(藤木氏)と揶揄されてきただけに、身内の反乱に動揺は隠せない。

コロナ対応に忙殺される中、菅首相は自ら支持者に電話するという熱の入れようだ。地元の選挙を取り仕切ってきた首席首相秘書官も現地に送り込んだ。公明党にも自ら全面支援を要請するなど、なりふり構わぬ対応には「これに負けたら俺は終わる」との悲壮感もにじむ。

投開票まであと6日。支持率下落で続投戦略が揺らぐ菅首相の命運を左右する「ハマの決選」は「投票箱のふたが開くまでわからない緊迫状態」(自民選対)が続いている。

泉 宏 政治ジャーナリスト

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いずみ ひろし / Hiroshi Izumi

1947年生まれ。時事通信社政治部記者として田中角栄首相の総理番で取材活動を始めて以来40年以上、永田町・霞が関で政治を見続けている。時事通信社政治部長、同社取締役編集担当を経て2009年から現職。幼少時から都心部に住み、半世紀以上も国会周辺を徘徊してきた。「生涯一記者」がモットー。

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