実は、竹中は私の会員男性だった。国家公務員をしているのだが、とにかく仕事が忙しい。私のところですでに3年活動しているのだが、一昨年の水害、昨年からのコロナ蔓延が仕事の忙しさに直結していたので、ここ2年ほど、腰を据えた活動ができていない状態だった。それもあって、竹中にしてみたら、仲人紹介見合いの奈津美とは、なるべく早く話をまとめてしまいたかったのだろう。その焦りが仇(あだ)となった。
「竹中さんは、すごく話の面白い人だったし、お見合いのときはとても盛り上がったんです。でも、交際に入ったら、どんどん自分のペースで話を進めていって、『そろそろ真剣交際に入って、来月はご両親にご挨拶に行きますよ』と言うんですね。お見合いで初めてお会いした人だったし、そのスピード感についていけなかった。婚活を長くしていて、『なるべく早く決めてしまいたい』と思っている人だったら、そうやって仕切ってもらえるのは楽だしうれしかっただろうけど、私はもっとじっくりと人柄を見たかったので、ちょっと怖くなってしまいました」
結局この交際は、奈津美から交際終了を出した。
留学経験のある外資系企業に勤める27歳男性
もう1人印象に残っているのは、外資系に勤める山田(仮名、27歳)だったと言う。海外に留学経験もあり、お見合いのときから話は面白かったのだが、彼もまた自分のペースで事を進めていく人だった。
「『結婚式はやってもやらなくてもいいし、どちらかと言えばやりたくないタイプです』と言ったら、彼は、『僕は、親に見せたいから、結婚式は何がなんでもやりたい。そこは譲れない』と。その頑なな感じにちょっと違和感を覚えました」
そこから始まって、山田は交際をどんどん仕切っていくようになった。仕事においても婚活においても、スピード感を持って進めていくのはとても大切なことだ。しかし、人と対峙して物事を進めていくときには、スピード感を持ちながらも、相手に共感し、相手の気持ちが今どこにあるかを確かめて進めていかないと、うまくいかない。
「ある週末にデートの約束をしていたのだけれど、その週に私の仕事があまりにも忙しかったので、“お会いする日を再調整してもらえませんか?“とご連絡をしたんです。そうしたら、『じゃあ、週末はオンラインの飲み会にしませんか?』とか、『今から電話していいですか?』とか、ガンガン連絡が来て、疲れてしまった。音信不通にしているわけではないのに、すべてが自分のペースで。結婚してもこの調子だと、先が思いやられるなと思いました」
極めつけは、ウィークデーの仕事終わりに食事デートをしたときのこと。彼が、自分の会社の近くのレストランを指定してきたので、奈津美がそこに出向いた。
「食事を終えて駅に向かう道すがら、2人で並んで歩いているときに、『こんなところを会社の人に見られたら嫌だなぁ〜』って言ったんですよ。私、心の中で、“それなら、会社の近くのお店を指定しなければよかったのに“と思ったんですよね」
そして、このデートの翌日、奈津美は山田に交際終了を出した。
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