債務問題の次に来る、欧州の大問題とは?

みずほ銀行 エコノミスト唐鎌大輔氏に聞く

――デフレ・停滞に苦しんできた日本の「失われた20年」のようになるかもしれないということでしょうか。

現在の欧州は、そうなるか否かの瀬戸際にあると言ってよいでしょう。私は欧州経済に関し、「債務危機」の次に来るキーワードは「日本化・円化・日銀化」だと考えています。「日本化・円化・日銀化」は「債務危機」のような急性症状を伴うものではないため、かつてのようなパニックは起こりません。

しかしながら、慢性的にゆっくり進行するため、自覚が難しいという怖さがあります。事実、行政府である欧州委員会が「今後10年でユーロ圏の潜在成長率は危機前に比べて半減する」とまで分析しています。

ということは、欧州経済は、これまでとは違う評価軸で見ていかなければならないということです。

欧州と日本の「7つの共有体験」とは?

――唐鎌さんは、日本との「7つの共有体験」を挙げて、警鐘を鳴らしていらっしゃいますね。「7つの共有体験」とは、具体的にはどのようなことでしょうか?

私が考える7つの共有体験とは、「1、不況下の通貨高」「2、貸し出し鈍化」「3、民間部門の貯蓄過剰」「4、経常黒字蓄積」「5、金融政策の通貨政策化」「6、人口減少」「7、上がらない物価」です。そして、これら7つの事象は何らかのかたちで相互連関しています。

順番としては、バブル崩壊により金融システムが大ダメージを受け、銀行貸し出しが落ち込みます(共有体験2)。貸し出しが増えないということは、実体経済に流通する貨幣量(マネーサプライ)も増えないことを意味します。これは理論的には物価が伸び悩む要因と考えられます(共有体験7)。そして伸び悩む物価は、その国の通貨の購買力を高めると考えられるため、通貨高の流れが生まれます。まさに、デフレの国の通貨である円が上昇してきたのと同じ構図です。

また、強いショックに見舞われた経済では、家計や企業の消費・投資意欲が著しく衰えるため、内需ではなく外需に頼る傾向が強まります(共有体験3、4)。ちなみに、外需依存は人口減少もその一因となっていると考えられます(共有体験6)。そうして外需依存が強まる結果として巨大な経常黒字が積み上がりますが、この時点で物価の伸び悩みと経常黒字が併存し、経済状態がよくなくても通貨高になりやすい環境が整うわけです(共有体験1)。これは言い換えれば、「外需に頼りたいが、構造的な通貨高圧力がある」という状況が生まれることを意味します。

そして、この状況を少しでも打開しようとして、中央銀行が通貨安のための金融緩和に追い込まれるのです。要するに、金融政策が通貨政策の様相を呈してくるということになります(共有体験5)。1990年代から続いた日本の長期停滞も、おおむねこうしたメカニズムの中で発生したものなのです。

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