債務問題の次に来る、欧州の大問題とは?

みずほ銀行 エコノミスト唐鎌大輔氏に聞く

 今、欧州経済は安定を取り戻し、通貨ユーロも堅調におおむね推移している。一見すると、世界のマーケットを大混乱させた債務危機は終息したかのように思えるが、はたして欧州経済の安定は本物なのか。
 欧州と日本の7つの共有体験とは何か。欧州は日本化を回避できるのか。
 近刊『欧州リスク-日本化・円化・日銀化』を上梓した、わが国屈指の欧州中央銀行(ECB)ウォッチャーである唐鎌大輔氏に、欧州経済の現状と未来について語ってもらった。
ECBのドラギ総裁(左)は、欧州の「日本化」やECBの「日本銀行化」を回避することができるか(ロイター/アフロ)

―― 今、欧州経済は平穏を取り戻し、通貨ユーロも安定しています。「債務問題」は峠を越えたのでしょうか?

唐鎌大輔(からかま だいすけ)
2004年慶應義塾大学卒業後、日本貿易振興機構(JETRO)入構。日本経済研究センターを経て欧州委員会経済金融総局(ベルギー)に出向し、「EU 経済見通し」の作成やユーロ導入10周年記念論文の執筆などに携わった。2008年10月より、みずほコーポレート銀行(現みずほ銀行)国際為替部で為替市場を中心とする経済・金融分析を担当。J-MONEY(旧EUROMONEY)誌が行った2012年第22回東京外国為替市場調査のファンダメンタルズ分析部門でランキング1位を獲得。

かつてのようなパニックはない、という意味で峠は越えたのだと思います。欧州債務危機が取りざたされ始めた2009年末以降、ユーロ圏には分裂・崩壊・瓦解という仰々しい表現が飛び交い、通貨ユーロにも暴落予想がついて回っていました。 

しかし、当時の不安をよそに、債務危機の発生から丸4年以上が経った今でも、ユーロは崩壊どころか、対円で安値より50%も値を上げています。これから考えるべき新しい問題は、なぜそのような動きになったのか、です。

――なぜ崩壊の可能性までささやかれた通貨の値動きが、堅調になったのでしょうか?

日本の円を思い出してください。「地力が疑わしいにもかかわらず通貨は堅調」というのは、これまでの日本の円にさんざんついて回ったテーマです。

そのことで、われわれ日本人は何度も痛い目に遭わされてきました。基本的にはユーロもそれと同じことが起きているのではないかと思っています。経済が力強さを取り戻したかといえば、決してそんなことはありません。

――唐鎌さんは「ユーロの円化」という言い方をされていますね。

ユーロには円と共通する特徴が多くあり、ユーロが円化している可能性が感じられます。重要なことは、ユーロがそうして円化している背景には、ユーロ圏の実体経済が日本化しているという事実があり、その結果として欧州中央銀行(ECB)も日銀化しているという事実があることです。

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