キプチョゲがナイキと紡いだ「2時間切り」物語 「厚さは速さだ」のナラティブが浸透した理由

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Breaking2とは、「フルマラソン2時間切り」のこと。2017年時点でのフルマラソンにおける男子世界記録のタイムは2時間2分57 秒(2014年のベルリンマラソンでのデニス・キメット選手の記録)。このタイムを3%短縮しないと2時間切りはできない。ナイキは人間にとって不可能とも言われていたBreaking2プロジェクトの実施について、2016年12月13日(日本時間)にリリースを出して正式に発表した。

リリースには、「ナイキが人間の可能性に挑戦するイノベーションプロジェクト」とある。つまり、人類に不可能はない、というメッセージであり、かなり広い範囲の関心を集めるテーマ設定だ。しかも「地球上のすべてのアスリートにインスピレーションとイノベーションを提供する」というナイキのミッションが起点のチャレンジでもある。

このプロジェクトには3人のエリートアスリートが合流した。エリウド・キプチョゲ選手、エリトリアのゼルセナイ・タデッセ選手(2004年アテネ五輪10000m銅メダリスト)、エチオピアのレリサ・デシサ選手(2015年ボストンマラソン優勝)だ。

それに運動力学、コーチング、デザイン、エンジニアリング、素材開発、栄養、スポーツ心理学、生理学などの各分野の世界クラスの専門家、そして革新的なランニングシューズを開発・提供するナイキが加わり、3人のアスリートの能力を最大化させるチームをつくってプロジェクトは始動した。

2017年5月6日。選手とチームは、自動車レースF1イタリアGPが開かれるミラノ郊外のモンツァ・サーキットでプロジェクトの成果を見せることになった。しかし結果を先にいうと、この時の挑戦は失敗。とはいえ、エリウド・キプチョゲ選手が非公認とはいえ2時間25秒をマーク。2時間の壁まであと一息というところまでタイムを縮めたのは快挙ではあった。

イタリアでの失敗でナラティブが進化

ここで注目すべきなのは、イタリアでのBreaking2の失敗が、結果的にナラティブを進化させたことだ。実はナイキは、イタリアでのタイムレースの様子を1週間Breaking2のフェイスブックページで視聴できるようにしたほか、挑戦に至るまでの3人の選手とチームの様子を、ナショナル・ジオグラフィック・スタジオと共同で長編ドキュメンタリーとして制作し、同年9月にユーチューブなどで公開している。

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