中国が香港を併合したくてもできない決定的理由

弾圧を強化すれば経済面で大きな打撃を受ける

では、香港は、中国にとってどのような役割を果たしているのか?

これには、貿易の側面と金融の側面がある。まず、貿易面を見よう。

2019年において、中国の輸出相手国の第1位はアメリカ(4186億ドル。中国輸出総額の17%)だが、第2位は香港だ(2797億ドル。同11%)。これは対日、対韓の合計(同10%)より多い。

通信設備、コンピューター設備、集積回路設備などが中国から香港に輸出されている。

もちろん、これらは香港で使われるわけではない。中国の製品は、香港に持ち込まれたあと、世界各地に輸出される。つまり、香港は中国の対外貿易の中継点になっているのだ。

2019年において、香港の輸出総額は5357億ドル。うち対米が391億ドルだ。

なぜこうしたことをしているのか?

香港からの輸出とすれば、関税を軽減できる場合があるからだ。

とくに重要なのが、アメリカの「香港政策法」(1992年成立。1997年7月1日に、香港が中国に返還されると同時に効力が発生)だ。これは、中国製品に課している関税を、香港には適用しないという優遇措置だ。

米中貿易戦争によって中国の多くの対外貿易が阻害されたとしても、香港というパイプがあれば、中国は多くのことをすり抜けられる。

香港は中国にとっての合法的な「貿易障壁の抜け道」なのだ。

これを見直されると、中国経済には大きな打撃になる。そして、後述するように、アメリカでは見直すべきだという動きが実際に生じている。

香港が果たす金融面での役割

金融面において香港が果たす役割は、もっと本質的で、もっと重要だ。

中国では強い資本規制が実施されており、当局が金融市場や銀行システムに介入する。しかし、香港には資本規制がない。香港市場は、世界有数の自由で開放的な市場だ。

このため、中国企業は、香港の株式や債券市場を利用して、外国資金を呼び込むことができる。

外国企業は、中国大陸に進出する際に、香港を足掛かりにする。外国から中国への直接投資も、中国から外国への直接投資も、大半は香港経由で行われる。

1997年に中国が香港の管轄権を回復して以来、香港は何兆ドルもの資金調達を行い、中国と世界をつなぐパイプ役となってきた。

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