中国が香港を併合したくてもできない決定的理由 弾圧を強化すれば経済面で大きな打撃を受ける

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資金調達の第1の形態は、新規株式公開(IPO)だ。

工商銀行などの国有企業も、IT大手の騰訊控股(テンセント・ホールディングス)などの民間企業も、大手中国企業のほとんどは、香港に上場している。

最近では、すでにアメリカ市場で上場を果たした中国企業が香港で上場する動きもある。

阿里巴巴(アリババ)集団は、2014年にニューヨーク証券取引所でIPOを実施したが、2019年11月に香港への重複上場を果たした。

2020年6月には、インターネットサービス大手の網易(ネットイース)やネット通販大手の京東集団(JDドットコム)も相次いで香港に上場した。

そして、アメリカ・ナスダック市場に上場している中国IT大手の百度(バイドゥ)は、2021年3月、香港証券取引所にも上場した。重複上場はバイドゥで15社目になる。

中国当局は中国企業のNY上場を制限

最近起こった滴滴(ディディ)のIPO直後の当局による規制強化事案に見られるように、中国当局は、中国企業がニューヨーク市場で新規上場するのを制限する方針だ。そうなると、香港市場の役割はさらに増すだろう。

リフィニティブのデータによると、2018年の中国企業によるIPOを通じた資金調達額は642億ドルであり、世界全体のIPO総額のほぼ3分の1を占める。そのうち、香港上場の上場での調達額は350億ドルだ。それに対して、上海と深圳は197億ドルにとどまる(Reuters, 2019.9.5)

また、香港ドルは米ドルに連動しているため、国際決済通貨で資金調達できることになる。香港市場への上場は、外国企業の買収や国外投資に向けた国際決済通貨を入手できることを意味するのだ。

中国企業はまた、香港を通じ、銀行の融資および社債の発行という形で多額の資金を借り入れている。

中国企業が昨年海外市場で行ったドル建て起債1659億ドルのうち、33%を香港の債券市場が占めた(Reuters, 2019.9.5)。

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