意外と知らない保育園「公立と私立」何が違うのか 減少傾向の公立保育園が担う「社会的役割」とは

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最近、私は公立の経験値をあなどれないと感じるようになっています。
このところ保育園を考える親の会に寄せられる保育施設に関する相談事のほとんどが私立の認可と認可外に関するものであり、公立についての相談はめったにないからです(直近80件中3件のみ。認可保育施設に占める公立園の割合は3割弱)。

保育園を考える親の会に寄せられる私立に関する苦情には、保育士の退職、施設長の横暴、不適切保育の疑い、集団行動になじめない子どもへのバッシングなどが目立ちます。もちろん、これらは一部の私立園に関するものです。私が出会った私立園の多くは保育環境を工夫して一人一人の子どもを大切する素晴らしい保育をしていました。それだけに、私立は玉石混交、質の格差が大きいことを痛感します。

公立にも施設環境や施設長・保育士の資質の差は表れますが、致命的な質の低下は起こりにくい構造になっていると思います。なぜなら、公立には自治体の機関ならではの研修体制・管理体制があり、また経験豊富な保育士の割合が高いことはやはり大きな支えとなるためです。

こういった公立の特性を知っておいて損はありませんが、保護者が園選びをする場合には、公立だから私立だからと決めつけず、個々の園の保育を見て選ぶことが大切です。

減少の一途の公立保育園

このようにさまざまな利点を持つ公立保育園ですが、数としては減少しています。

30年前の1991年は認可保育所の約6割が公立でした。現在、認可保育所・こども園に占める公立の割合は前述のように3割弱になっています。この30年間、認可の保育施設は増え続けてきましたが、ほとんどが私立での新設で、公立は逆に民営化などで数が減っています。

公立園が減らされる背景には、自治体のコスト削減策があります。

2004年、小泉政権の「三位一体改革」で公立保育所の運営費が一般財源化されました。それまでは、公立も私立も保育所の運営費は国・市区町村・都道府県が分け合って負担していたのですが、このときから公立のみすべて市区町村の負担となりました(国の説明では公立の運営費は地方交付税に含まれていることになっている)。この制度変更によって、公立の民営化が一気に進むようになりました。中には、全部の公立を民営化する方針を打ち出している自治体もあります。

今年の4月は待機児童が減少して保育園に入りやすかったと言われています。もしも、少子化傾向が顕著になって保育施設の空きが問題にされるようになると、コストがかかる公立の統廃合などがさらに進められる可能性もあります。しかし、それは本当に住民の利益になることなのかどうか、慎重に検討する必要があります。

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