「健康維持にプロテイン」は逆に体壊す医学的理由 タンパク質の過剰摂取が引き起こす大問題

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また、美容のためにプロテインやアミノ酸がすすめられることもあります。「筋肉や内臓だけでなく、皮膚も毛髪もほとんどタンパク質でできているのだから、それをしっかり補わなければ健康も美容も維持できない」というわけです。

明確に述べておきますが、どちらも誤りです。まず、本当に筋肉が減るのかについて誤解を解きましょう。

筋トレをしたり、体を絞り込むダイエットを行ったりするとき、その燃料として体内に貯蔵されているグリコーゲンがブドウ糖に戻されて使われます。グリコーゲンはそれなりの量がありますから、なかなか燃料切れにはなりません。いよいよそれを使い切ってしまうと、今度はようやく脂肪細胞にため込まれた脂肪が燃え始めます。だから、肥満者が少し運動をしただけでいきなり脂肪を燃やしてやせることはできないのです。

もし、その脂肪まですっからかんになってしまったら、はじめて筋肉が利用されます。しかし、現代社会でそんなことは起きません。狩猟や採集で生きてきた私たちの祖先は、絶えず飢えていたはずです。それでも動物を追えるほどの肉体を維持していたのですから、タンパク質を絶えず補給しないと筋肉が保てないということはないのです。

アミノ酸は体内に一定量ためられる

では、なぜタンパク質は積極的に補充しなくても大丈夫なのか。それは、私たちの体に「アミノ酸プール」という素晴らしいシステムが備わっているからです。プールという名の通り、私たちは体内に一定量のアミノ酸をためています。しかも、そのアミノ酸は再利用できるのです。

アスリートが筋肉を鍛えるとき、強い筋トレを行って一度筋肉を壊しますね。その修復過程で筋肉は太くなっていくことから、「筋トレをすれば筋肉が壊れてしまうので、プロテインで補充しなければタンパク質が足りなくなる」と思い込んでいる人が多いようです。しかし、壊された筋肉のアミノ酸は、再利用されます。

繰り返し確認しておきます。肉や魚、大豆など普通に口にしている食べ物からのタンパク質は、最終的にアミノ酸に分解されます。加えて、壊れた筋肉やコラーゲンなどから再利用されるアミノ酸もあります。それで十分なのです。

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