「東芝次期社長」に冨山和彦氏の名前が浮上する訳 「モノ言う株主」に打診を開始、経産省も容認か

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というのも、2020年7月の株主総会の運営をめぐる弁護士らの調査でも明らかになったように、「経産省とはズブズブの関係」(金融関係者)で、社長人事を決めるのも「経産省の意向を無視できない」(同)ためだ。

その点、冨山氏は経産省の受けは悪くない。前述したように、経産省の肝いりで誕生した産業再生機構の設立に携わり、現在も経産省が監督する政府系ファンドの産業革新投資機構の社外取締役の経験もある。

経産省は、電力会社やメーカーを横断した原子力産業の再編を進めたいとの思惑を持っていると言われ、東京電力ホールディングスの社外取締役を2020年まで務めていた冨山氏はまさに適任というわけだ。事情に詳しい関係者によれば、「経産省も水面下で(冨山氏の東芝社長就任に)前向きだと言われている」と明かす。

「火中の栗」を拾う冨山氏

冨山氏の起用案は東芝の大株主であるアクティビストの一部にも打診されている模様だ。「冨山氏であれば反対はしないとの意向を示している」(別の金融関係者)といい、「他に火中の栗を拾うような奇特な人はおらず、冨山氏決定が濃厚なのでは」(同)との見方が広がっている。

「車谷氏は『俺がアクティビストをおとなしくさせる』と対立する前提で東芝に乗り込んだために失敗したが、(冨山氏の社長)就任前にアクティビストに了解を得ていれば同じ轍は踏まないだろう。だが肝心なのは、東芝の企業価値を高めて株価を向上させること。それに失敗すれば、再びアクティビストたちが牙をむいてもおかしくない」(同)

東芝は冨山氏の起用案について、東洋経済の取材に「CEOの後任は指名委員会において社内外の候補者を前提に検討を進めている。社外候補者についてはグローバルなエグゼクティブサーチ会社を選定したところであり、候補者の特定を含め、現時点で決まっているものは何もない」とコメントしている。

アクティビストたちの本音は、株価のさらなる上昇のためには1日も早く混乱の収拾を進めるべきというもの。冨山氏の社長就任は認めるが、その後はお手並み拝見といったところのようだ。

田島 靖久 東洋経済 記者

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たじま やすひさ / Yasuhisa Tajima

週刊東洋経済副編集長。大学卒業後、放送局に入社。記者として事件取材を担当後、出版社に入社。経済誌で流通、商社、銀行、不動産などを担当する傍ら特集制作に携わる。2020年11月に東洋経済新報社に入社、週刊東洋経済副編集長、報道部長を経て23年4月から現職。

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