「東京五輪レジェンド4人」メダルよりも凄い名言 体操・内村、ソフト・上野らのコメントから学ぶ

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カヌー・スラローム男子カナディアンシングルの羽根田卓也さんは、決勝で10位に終わり、前大会に続くメダル獲得はなりませんでした。

負けたことの意味や価値を見いだす

羽根田さんは、「東京オリンピックが決まってから、本当に自分のすべてを費やして今日という日を迎えることができました。決勝まで進んでここまでチャレンジできたのは選手としてこの上ない幸せだと思うんで、まずはこの舞台に挑戦できたことに感謝したいと思っています」と涙ぐみながら語りました。

さらに、「応援してもらっている以上は、『弱音を吐くなんて許されない』と思っていました」「みんなから求められていることを自分の生き様を通して、この日にすべてをぶつけられるように過ごしてきました」と感情の高ぶるままに話し続けたのです。羽根田さんは決して狙っていないのでしょうが、知名度も実績もある第一人者が感情をあらわにしたことで、見る人々を感動させたことは間違いありません。

また、羽根田さんは10位に終わったことであらためてメダル獲得した前大会の価値を再確認できたことも明かしています。ただ「負けておしまい」ではなく、「負けたことの意味や価値を見いだす」ことの大切さを教えてくれたのではないでしょうか。

競技のパイオニアであり、3大会連続決勝進出という結果も出しましたが、羽根田さんの競技に取り組む姿勢は、それ以上に素晴らしいものだったのかもしれません。

3大会連続でカヌー・スラローム男子カナディアンシングル決勝に出場した羽根田卓也さん(写真:YUTAKA/アフロスポーツ)

五輪王者が勝っても泣かない理由

今回は4人のレジェンドにスポットを当てましたが、若い世代のコメントにも目を引くものがありました。なかでも最後にぜひ紹介しておきたいのが、体操男子個人総合で金メダルに輝いた橋本大輝さんのコメント。

19歳の橋本さんは金メダルを決めたあと、「ここで涙を流してしまうと、今の状態に満足していることになってしまう」「チャンピオンは(勝っても)涙を流さず、常に前だけを見ているもの」と語り、涙を見せず堂々とした振る舞いを見せていました。その“チャンピオン”とはレジェンド・内村航平さんのことであり、偉大な先輩を超える個人総合3連覇を狙っているということなのでしょう。

レジェンドと新世代の選手がこれほどの姿勢で臨んでいるわけですから、東京オリンピックから、まだまだ学びのある名言が飛び出しそうです。

木村 隆志 コラムニスト、人間関係コンサルタント、テレビ解説者

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きむら たかし / Takashi Kimura

テレビ、ドラマ、タレントを専門テーマに、メディア出演やコラム執筆を重ねるほか、取材歴2000人超のタレント専門インタビュアーとしても活動。さらに、独自のコミュニケーション理論をベースにした人間関係コンサルタントとして、1万人超の対人相談に乗っている。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』(TAC出版)など。

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