デジタル庁の成否「民間人登用」が重大な鍵握る訳 長年の課題のIT改革に本当のメスを入れるために

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今回こそはと日本政府がe-Japan戦略からIT改革に取り組んで早20年。政府は今まで丸投げを防止するための分割発注、調達を一括管理する司令塔となる政府CIO(内閣情報通信政策監)の設置、専門的見地から要件定義書を精査するCIO補佐官の採用等、漸次的に改善を試みてきた。

しかし、政策の優先順位が高かったとは言えず、絵に描いた構想や計画を裏付ける権限や人材等のリソースは十分に確保されてこなかった。そして、根本的な解決がされてこなかった結果が今回のコロナ禍で白日の下に晒されることとなった。

今回設立されるデジタル庁は、危機意識を持ってそのような過去を打破できるのであろうか。少なくとも設置に際して省庁の予算をまとめる権限や人材の確保は順調な滑り出しのようだ。

デジタル庁は民間専門人材を活用できるか

ただ、それらに魂を吹き込むためには、デジタル庁が霞が関の負の慣習を本当の意味で破ること――即ち、専門性を活かしてデータに基づいた目標管理や意思決定を行い、最新ツールを使いこなして顧客である国民のために結果を出し、絶えず変化する組織になる――が必要だ。そんな「イノベーション体質」への転換が可能なのか。その鍵となるのは、民間からきた専門人材が、重要な意思決定のラインに入れるかどうかではないだろうか。

デジタル庁では約500人中120人の民間人を受け入れ、またそれらの民間人がフルタイムではない・テレワーク可能等の新しい働き方を許容するなど野心的な設計となっている。官庁の採用としては珍しく明確な職務内容や細かい応募条件を課し、これまでにプロジェクト・マネージャー、エンジニアなどの技術職、幹部、デジタルヘルスや教育の専門人材など4回の公募が行われた。最初の公募では33人の枠に43倍、1432人の応募があるなど、関心は高い。

霞が関では金融庁で最新の知見を持つ専門人材を受け入れるなど民間登用が徐々に広がりつつある。しかし、総じて高いレベルの職位は解放せず、終身雇用を前提に、新卒採用・内部育成のキャリア公務員に配慮した構造だ。同じ議院内閣制のイギリスではIT、不動産資産管理、財務、医療等、官民共通の専門性がある職種で中途採用比率が高い。上級公務員でも2割を占め、職位のレベルは局長級や課長級のポストも含まれる。専門職・スタッフ部門の職位だけでなく、ライン部門の政策形成の職位でも15%ほどを中途採用が占める格好だ。

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