デジタル庁の成否「民間人登用」が重大な鍵握る訳 長年の課題のIT改革に本当のメスを入れるために

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また、日本と近しい労働慣行を持ちながらも、国連経済社会局発表の世界電子政府ランキングで2位の韓国では、過去20年で官僚組織の専門人材の活用に力を入れてきた。電子政府の中心的な役割を担う情報化振興院(NIA)の職員670名のうち、半数は民間人で、9割が博士号保有者である。IT分野の専門家のみならず、電子政府の構築に必要な法律、医療、教育、金融などの専門家も採用している。

韓国では、1997~1998年のIMF通貨危機の際に、経済危機の最大の原因は政府の非能率であり、その象徴が公務員とされ、公務員改革を強いられた。特に、専門性の観点は中心的な課題となっており、1年など短いサイクルで頻繁に行われる内部異動が、専門知識の蓄積の妨げになっていると批判を受けた。2014年には政府内のすべての職員を「長期間在籍の必要性」と「専門知識・情報の水準」に応じて分類し、戦後のジェネラリスト中心の人事システムからスペシャリストによる二元化システムに大きく転換した。

半数が法文系で異動が多い日本の官僚機構

日本の官僚機構は、終身雇用と年功賃金を中核とする日本型雇用システムの中でキャリアが傷つくような失敗は許されず、構造上、前例踏襲バイアスがかかり非連続な変化を生み出しにくい。また、所謂キャリア官僚の約半数は法文系出身であり2年毎に異動し、着任した新しい分野で一から勉強するという典型的なジェネラリスト型だ。

一方、デジタル庁のミッション実現には、最新の知見を持った専門人材の活用と育成が不可欠である。もっと言えば、本来は全ての政策においてデータやコンピューターサイエンスの視点が不可欠な時代であり、全ての省庁で高い専門性を持った人材の配置が求められる。霞が関で単一のキャリアパス以外の専門性の高いキャリアをどう実現するか、また民間人材をどのように処遇して位置付けるか。CXOレベルを民間採用するデジタル庁での壮大な実験は、今後の「霞が関の人事のあり方」そのものに影響を与える可能性が期待される。

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