ジョブズ存命でも、アップルの進化難しかった

『沈みゆく帝国』著者、ケイン岩谷氏に聞く(前編)

――執筆に当たり、意識したことは何でしょうか。

難しいのは、どこでストーリーを終わらせるかということだった。書籍を執筆しながらニュースが発生していくので、構成の「初め」と「真ん中」と「終わり」の組み立てには悩んだ。ただ、読者は、ジョブズがいなくてもアップルが偉大でいられるかということを知りたいはず。そのため、死後に起きた様々な出来事とジョブズだったらどうするかということの記述を、意識的に盛り込むようにした。

 アップル特有の問題ではない

3月に発売された著書(日本では6月に発売)は、ティム・クックCEOに「ナンセンス(寝言だ)」との批判も受けた

もう一つの視点は、ビジネスにおける話だが、アップルは一つの帝国であるということだ。皇帝がいなくなった後の帝国の話ということを意識した。古代のローマ帝国やマケドニア帝国で皇帝がいなくなった後の過程は、今では知ることができない。なので、この状況を生で見られるのはチャンスでもあると思った。

――アップルの未来について、岩谷さんは悲観的でいらっしゃるように見えます。

「世の中を変える製品を次々に繰り出すイノベーティブな会社でいられるか」と問われたら、そうではないだろう。普通の優良企業ではいられると思うが、これまでのアップルに対するイメージであり、ジョブズ自身のアップル像でもあった姿が続くとは思っていない。その意味では、(邦題である)「沈みゆく帝国」だ。

――「沈みゆく」と感じるのはなぜでしょうか。本書では、中国での労働問題、(音声入力ソフトの)Siriの失敗、アンドロイド陣営との法廷闘争などが、詳細に描かれています。

どの出来事も、当てはまる。ただ、この問題はアップルだからというよりも、これだけの大きな会社になってしまった会社は皆、同じ道をたどるのではないか。今アップルに起きていることはアップルだからということではなく、どこの会社でも起こりうることだ。

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