社会の不平等を軽視する人は弊害をわかってない 幸福感低下や経済不安定化、環境破壊などにも
不平等の拡大は、あくまで政策の選択の結果だ。そういう政策の選択はむしろ国家の進歩をさまざまな面で妨げる。
なぜ不平等が問題か?
不平等を避けることは可能なはずだが、最近まで、新自由主義の脚本に沿って、不平等は警戒すべきものとは見なされず、適切な政策目標にならないといい切られてきた。「健全な経済学に有害なあらゆる傾向のなかで、もっとも誘惑されやすく、私見ではもっとも害がはなはだしいのは、分配の問題にこだわることだ」と、有力な経済学者であるロバート・ルーカスは2004年に述べている。
世界銀行の主任経済学者ブランコ・ミラノヴィッチによれば、世界銀行ではこれまでのおよそ20年間、「不平等という言葉ですら、政治的に受け入れられていなかった。その言葉がばかげたこと、あるいは社会主義者のいうことと思われていたからだ」という。
あるいは、社会的な不平等をどの程度まで受け入れられるかは、個人的または政治的な好みの問題にもされた。例えば、イギリスの元首相トニー・ブレアは英国のスターサッカー選手に関する発言で、「わたしはデイヴィッド・ベッカムの報酬を減らすことに情熱を燃やそうとは思わない」と述べた。しかし過去10年で、社会や政治、環境、経済にもたらすその甚大な影響が明らかになるにつれ、不平等に対する見かたは一変した。
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