2020年度の税収が増えたのは、コロナ禍でも利益を増やした企業の法人税収が予想以上に多かったこと、消費税率を10%に上げた効果で消費税収が過去最高となったことが挙げられる。
2020年度の税収が増えたことは、経済成長に伴う税の自然増収がより多くなる形でその後の経済見通しに反映される。名目経済成長率が1%高まると税収が何%増えるかを表す税収弾性値は、2020年代を通じて1.1前後となっている。中長期試算の発射台となる2020年度の税収が多いと、同程度の税収弾性値でも、それだけ税収が増える。これは財政収支の改善要因となる。
PB改善幅の6割が税収増による
前述のように2021年度の名目GDPが少なくなったことによる財政収支の悪化要因もあるが、両者を合わせると、財政収支の改善要因の効果が上回るとの試算結果が示された。
その結果、7月試算における2025年度の税収(国と地方合計、成長実現ケース)は、1月試算よりも2.0兆円増加した。その他収入も加味すると、2025年度の税収等は1月試算よりも2.6兆円増加したことになる。これは7月試算における2025年度のPB改善幅(1月試算比)4.4兆円のうち、約6割が税収等の増加によるものということになる。
7月の中長期試算では、以前と同様、追加的な歳出改革を織り込まない想定としている。したがって、2022年度以降に追加的な歳出改革を実施すれば、7月試算で示されたPBよりも収支を改善できる。
筆者がコロナ前の中長期試算で示された歳出額の見通しの経年変化を分析したところ、恒久的な歳出改革の効果として、1年ごとに1兆円弱の追加的な歳出削減が実行されていることがうかがえる。
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