どうなるのか?「東京五輪後」の日本の財政収支 歳出改革を続ければ2025年度の黒字化は可能だ

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成長実現ケースにおいて、1月試算では2025年度に7.3兆円のPB赤字(対GDP比で1.1%の赤字)だったが、7月試算では同じく2.9兆円のPB赤字(対GDP比で0.5%の赤字)となった。わずか半年で、2025年度の基礎的財政収支の赤字は半分以上減少したのだ。

新型コロナの感染拡大が続く中、なぜそれほど財政収支が改善するのだろうか。結論から言えば、2020年度決算がほぼ固まり、それを踏まえて試算を改訂したからである。

ただ、経済成長率の鈍化が財政収支の悪化要因になりそうだ。1月試算では、2020年度の名目成長率はマイナス4.2%、2021年度に4.4%だったが、7月試算では2020年度にマイナス3.9%と上方修正されたものの、2021年度に3.1%と下方修正された。これにより、2021年度の名目GDPは、7月試算は1月試算よりも6.5兆円少なくなると見込まれている。

2021年度でもコロナ前には戻らない

新型コロナの影響で、2020年度の名目GDPは大きく落ち込んだ。事前予想よりは小さかったものの、東京都では緊急事態宣言が断続的に続き、2021年度に入っても経済活動は十全に再開されていない。

つまり、1月試算時点では、2021年度にはコロナ前の名目GDPに回復すると見込まれていたが、7月試算時点では2021年度にはコロナ前の水準まで戻らないと想定した。

中長期試算の発射台となる2021年度の名目GDPが低くなると、そこから経済成長するとしても将来のGDPも小さくなる。7月試算の2025年度の名目GDPは、1月試算より、成長実現ケースでは17.1兆円少なく、ベースラインケース(2020年代の名目成長率が1.5%前後と想定)では3.5兆円少ない。将来の名目GDPが小さいと、それだけ税の自然増収(税率を引き上げなくても増える税収)は少なくなる。これは財政収支の悪化要因となる。

では、新型コロナの影響がありながら、PB黒字化の達成年次が早まったのはなぜなのか。それは、2020年度の決算ベースでの税収が想定したほど落ち込まなかったからである。

1月試算時点では、2020年度の補正後予算ベースの税収しかわかっていなかった。その時点で、国税(一般会計分)が55.1兆円、地方税が42.3兆円だった。しかし、その間に2020年度の決算が固まり、決算ベースの税収は、国税(一般会計分)が60.8兆円、地方税が43.0兆円とそれぞれ増えた。

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