ワクチン陰謀論を煽って金に換えたい人々の思惑 冷静さを欠いたアンチワクチン活動が根深い訳

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実際に商業出版がなされているある書籍では、アマゾンに掲載された説明の冒頭に、さまざまなワクチンのリスクが具体的に延々と書かれている。ただ、いずれも医学的には正しいが、その頻度を考えれば、あまりにバランスを書いた記載だ。どこまでが医師の意向で、どこからが本を売るための編集者の意向かはわからないが、こんな文章を読まされて、不安になるなというほうが難しい。

では、どうすればいいのか。世界では、こんなことにまで実証研究が進んでいる。5月24日、『米国医師会雑誌(JAMA)』は「信頼とワクチン接種、アメリカにおける10月14日から3月29日の経験」という論文を掲載した。興味深いのは、この論文の著者が、アイルランドとイギリスの医師たちであることだ。世界中がアメリカのアンチワクチン運動に注目していることがわかる。

論文の結論は至極真っ当

しかしながら、論文の結論は、至極真っ当なものだった。論文では、当局がワクチンを適切な手続きを経て承認し、接種を粛々と進めることで、ワクチンへの信頼が醸成されたと結論づけている。

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実は、これこそ、冒頭でご紹介した相馬市がやったことだ。アンチワクチン勢力からの反発を恐れず、科学的なエビデンスに基づき、行政が、接種希望者に対して、淡々とワクチン接種を進めた。相馬市在住の友人は「子どもにワクチンを打つことは不安でしたが、自分自身が接種して、大きな問題が起こらなかったし、何よりも安心できたので、子どもにも勧めました」という。

コロナ対策に王道はない。粛々とやるしかない。アメリカや相馬市の経験は参考になる。

上 昌広 医療ガバナンス研究所理事長

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かみ まさひろ / Masahiro Kami

1993年東京大学医学部卒。1999年同大学院修了。医学博士。虎の門病院、国立がんセンターにて造血器悪性腫瘍の臨床および研究に従事。2005年より東京大学医科学研究所探索医療ヒューマンネットワークシステム(現・先端医療社会コミュニケーションシステム)を主宰し医療ガバナンスを研究。 2016年より特定非営利活動法人・医療ガバナンス研究所理事長。

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