アンチワクチン運動が広がるのは日本だけではない。コロナ流行以前から重大な問題だった。世界保健機関(WHO)は、2019年の世界の公衆衛生学的問題の10大リスクの1つにアンチワクチン運動を挙げている。
世界はなりふり構わない。アンチワクチン運動が盛り上がるまでにワクチンを打ちきろうとしている。その筆頭がアメリカだ。6月2日、バイデン大統領は「国を挙げて行動する月」を宣言し、ワクチン接種を受けた人に抽選で100万ドルが当たる「ワクチンくじ」を実施することを発表した。それ以外にも、飲食産業がワクチン接種証明を提示した客には無料券を提供したり、野球のメジャーリーグも、球場周辺にワクチン接種会場を設け、接種を済ませた人は無料で観戦できるようにしたりして、官民を挙げてワクチン接種を進めた。
インセンティブでワクチン接種を進めるのは、政治家や実業界だけではない。アメリカ疾病対策センター(CDC)によれば、ワクチン接種を完了した人は、病院や交通機関などを除きマスクを装着したり、ソーシャルディスタンスを維持したりする必要がないと表明しているが、これは形を変えたインセンティブだ。
景品を用いてもワクチン接種は加速しなかった
では、その効果は、どの程度だろうか。これについても、実証研究が行われている。7月2日、『米国医師会雑誌(JAMA)』は、オハイオ州で、景品とワクチン接種率の関係を調べ、景品を用いてもワクチン接種は加速しなかったと報告している。
最近、アメリカはやり方をかえている。それはいわば「脅迫」に近い。7月5日、アメリカ国立アレルギー感染症研究所(NIAID)のアンソニー・ファウチ所長が、NBCの番組「ミートザプレス」に出演して、「先月の死亡者のうち99.2%がワクチンを接種していなかった」と発言したことが、日本国内でも広く報じられた。ファウチ氏の正確な意図はわからないが、彼が、この時期に発言したのは興味深い。
なぜ、ここまでアメリカがワクチン接種を急ぐのか。繰り返すが、それは、アンチワクチン運動が盛り上がる前に、ワクチン接種を進め、集団免疫を獲得したいからだ。日本の医学界では、アンチワクチン運動について、あまり議論されることはないが、世界は違う。
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