さらに、最近は後遺症も議論されるようになった。6月23日、ノルウェーの研究グループがイギリス・『ネイチャー・メディスン』に発表した研究では、16歳から30歳の若年者の52%で、感染後に、味覚障害や嗅覚障害、息切れ、さらに集中力や記憶力の低下などの症状が続いていた。
ところが、この状況でもワクチン接種を進めることは難しい。それはアンチワクチン運動が盛り上がるからだ。一部の人々が、ワクチンの危険性や陰謀論を声高に叫び、多くの国民が不安になる。いったん、アンチワクチン運動が盛り上がると、政府や専門家がいくら説明しても無駄だ。2013年のヒトパピローマウイルス(HPV)の副反応騒動など典型例だ。厚労省は積極的接種勧奨を止め、70%を超えた定期接種率は1%を下回った。
日本は「世界で最もワクチンが信頼されていない国」
日本には、このようなアンチワクチン運動が盛り上がりやすい土壌がある。このことは世界的にも有名で、イギリス・ロンドン大学の研究チームが世界149カ国から30万人を対象に、ワクチンの信頼度を調査した研究成果をイギリスの医学誌『ランセット』に発表したが、日本は「世界で最もワクチンが信頼されていない国」と評された。
なぜ、日本でワクチンの信頼度が低いのか。それは、国家の信頼度が低いからだ。詳細は省くが、われわれは、国家の信頼度とワクチンの信頼度が相関することを、『ランセット』2020年1月5日号に発表した。国家の信頼度が低い国の多くが第2次世界大戦で、国土が戦場あるいは占領されていたことは示唆に富む。北欧諸国の国家への信頼度は高いが、バルト三国の信頼度は低いことなど、このような視点から考えれば納得がいく。
ワクチン接種は国家の公衆衛生事業だ。政府の信頼度が影響してもおかしくはない。日本のワクチン接種が難航するのは、日本の近代史が関係している。このような背景を知れば、コロナワクチン接種も一筋縄ではいかないと考えねばならない。よほどうまくやらない限り、アンチワクチン運動が盛り上がり、接種は停滞する。
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